先週は全般的に米ドル安の傾向が強かったといえます。
対円に限らず、米ドルの総合的な価値を示す指標であるドルインデックスも大きく下落しています。ドルインデックスは主要6通貨(ユーロ、円、英ポンド、カナダドルスウェーデンクローネ、スイスフラン)を重要度に応じて加重平均した数値で、この数値の下落は、主要通貨全般に対し米ドルが弱くなっているということですね。

反面、金先物はついに1500ドル台に乗せる強さです。
ご存じの通り、米ドルと金は逆相関関係にあると言われていますが、ここ何年かは特にその傾向が強いように見受けられます。

金そのものには利息等はつきませんが、希少性のある金現物の裏付けがあるだけにその価値の普遍性から、安全資産の代名詞となっています。

米ドルは為替市場の基軸通貨であり、価値がゼロになることはありませんし、かつては金本位制度のもと、金と同価値(固定為替相場)とされていました。
(1971年のニクソン・ショックにて停止・変動為替相場へ移行)
金本位制度がなくなっても、米ドルの安全資産としての価値は広く認められていて、かつては「有事のドル買い」が市場では当たり前の取引とされていたものです。

ところが現在、戦争やテロなど大きな「有事」があれば、完全に「有事の金買い」となっていますね。各地での紛争その他に、ほとんどの場合米国が当事者として絡んでいることが理由の一つとも言えるでしょう。

リーマンショック後、各国一斉の金融緩和政策から早くはオーストラリア、直近ではユーロも利上げに転じましたが、米国は現在QE2を続行中で、超低金利のままです。米ドルの魅力が増してこないところでもありますよね。
米国が出口戦略に向かい、各国通貨と金利差が出てくるようになれば、もう少し状況は変わってくるかもしれません。

ただ世界経済においては、金融市場としても米国が中心的な位置にあることは変わりありません。たとえ米ドルが有事において売られる通貨になろうとも、やはり米国の動向からは目は離せませんね。

さてそんな米国ですが、今週26日、27日にFOMC(連邦公開市場委員会)が行われます。FOMCは年8回行われる米国の金融政策を決める会議で、世界経済への影響も大きく、米国雇用統計と同様に市場参加者がもっとも注目するイベントの一つです。

今回、初の試みとして委員会後にバーナンキFRB議長の記者会見が行われる予定となっています。
政策そのものは変更されないだろうという予想はありますが、会見でその意図の説明や今後の方向性などに触れられることが期待されています。

おりしも米格付け会社S&Pが米国債の見通しをネガティブに引き下げたこともあり、(先週の米ドル安の背景の一つ)市場では米国経済への懸念も強まっています。この懸念を払しょくするような会見になるかどうかが見どころでしょうか。

会見と市場の受け止め方、すなわちその前後の米ドルの動きは見逃せませんね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー