今回の地震の後、大きく被災したわけではない地域においても日常からかけ離れた情景が繰り広げられ、まだ続いています。

首都圏ではいまだに店頭では納豆やヨーグルトといった商品の不足が目立っていますが、地震直後にはスーパーやコンビニでは店に入るのに行列しなければならず、どの棚も空っぽで、私自身初めて経験する事態で大変不安を感じたものです。

地震・津波という未曾有の大災害のみならず、収束しない原発事故によって情報が錯綜し、メディアも不安を煽るようなかなり刺激的な報道を繰り返し、ネットではそれこそ真偽の程の確かでない情報が飛び交っていました。直接の被災地以外の広域においても、不安が不安を呼ぶ過剰反応と集団心理による「買占め」が行われたということですね。もちろん、現時点では買占めが理由ではなく、被災や計画停電などの影響で、実際に工場の生産が間に合わないという事情もあるのですが。

さて、今回多くの国民が「買占め」に走った「集団心理」ですが、Wikipediaによると「社会心理学の用語で、その社会の構成員である集団が、合理的に是非を判断しないまま、特定の時流に流される事を指す」とあります。「合理的に是非を判断しないまま」というのが集団心理に基づく集団行動の怖いところですね。

相場も参加者の行動によって動くものですが、当然のことながら「集団心理」に振り回される場面は大変多くあります。「パニック買い」「パニック売り」などがそれにあたります。

例えば合理的に計算される理論価格=株価が存在するはずの株式市場においてもこうした状況は見受けられますし、そもそも相対取引のため市場参加者の行動が見えにくく理論価格が想定しにくい為替市場においては、集団行動による相場形成はより多く見られるとも言えるでしょう。合理的に考えるよりトレンドに乗ってしまう取引が多いですよね。

こうした集団行動・・・投資家の心理に着目した理論が「行動経済学」と言われるものです。2002年にダニエル・カーネマン教授が経済学に心理学を融合した行動経済学でノーベル経済学賞を受賞したことで広く知られるようになった比較的新しい学問です。

そもそもの伝統的な経済学では投資家の行動は合理的であるという前提において理論を構築してきたのですが、それだけでは市場の動きは説明できないものでした。行動経済学では人間はたとえ冷静なときでも「確実な結果を好み、利益を受ける場合はリスクを回避し、損失を受ける場合はリスクを取る(「プロスペクト理論」から)」傾向があるとしています。

人間の判断は理論上の合理性とは必ずしも一致しないということですね。市場はそうした非合理的な判断をする人間の行動によって動くものですから、理論通りにはならないのは至極当然とも言えます。

相場をみるときは、パニック的に買占めに走る「人間」が市場参加者であることを忘れてはいけませんね。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー