2011年がスタートして3週目となりますが、今年最初のコラムとなります。本年もどうぞよろしくお願いいたします!

年初から世界経済に動きがありますね。概ね上向きの報道で、卯年+米大統領選の前年のアノマリー通りかな、という印象を受けています。個人マネーも動き出しているようです。

米国、日本の景気回復がこのまま順調に進むことに対する期待もありますが、それも今や世界の景気をけん引しているといえる新興国、資源国の政策のかじ取りが大きく影響してくるといえますね。

景気回復が早く、インフレ懸念のあるこれら新興国においては、利上げの遅れが指摘されています。インフレ率を差し引いた実質金利が軒並みマイナスとなっているという先週の新聞をご覧になった方も多いことでしょう。この報道の後、韓国、中国(中国は預金準備率の引き上げですが、引き続き利上げも期待されています)などの措置が続いています。

金利政策は景気過熱期には利上げ(金融引き締め)を行うことで、消費を抑制し、インフレの芽を摘み、景気停滞期には利下げ(金融緩和)を行うことで、資金需要を促し、景気を刺激するというのがセオリーです。現に、リーマンショック後、世界各国が一斉に利下げによる景気刺激策をとりましたよね。

こうした金融政策をセオリー通りにすんなりと行えないのが、最近の新興国の悩みといえます。金利上昇は通貨の魅力を引き上げますから、当然のことながら通貨買いを誘います。元々取引量が多く、流動性が十分にある市場規模の大きい通貨でも、利上げによる通貨高は顕著です。これが市場規模の小さい通貨となると流通量が少ないためにその上昇は激しく、資金流入が過熱してしまうことになります。それによって、ますますのインフレを引き起こし、ひいては国内経済に大きなダメージを与えることにつながりかねません。

米国のQE2など、先進国の金融緩和によって余った資金はこうしたマーケットに急激に流れこんでいます。投機マネーが新興国市場を襲うことによって引き起こされた90年代後半のアジア危機の再来は新興各国にとってもどうしても防ぎたいものです。そこで、トルコのように景気回復が順調でありながら通貨高回避のために利下げを断行するという異例の処置をする国もあるわけです。
また、資源国においては天候といった人為的でない事象が大きな意味を持ち、今回のオーストラリアやブラジルにおける大洪水は経済に大きなダメージを与えることも予想されています。景気回復と天候などによるダメージと為替・金融政策のバランスは大変難しいですよね。

アノマリー通りに日米の景気が順調に回復していくためには、こうした経済の結びつきの強い、新興国・資源国が安定していることは重要な基盤となります。
日米を中心に投資している方も、今後はますますこうした国々の経済状況の影響が大きくなってきますので、ぜひ注目するようにしてくださいね。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員