この特例は正式には「平成13年9月30日以前に取得した上場株式等の取得費の特例」 といいます。居住者等が、2001年9月30日以前から引き続き所有していた上場株式等を2003年1月1日から2010年(今年)12月31日までの間に譲渡した場合、譲渡所得の金額の計算に使用する株価の取得費は、その上場株式等の2001年10月1日における終値の80%に相当する金額とすることができる、というのがその概要です。
「引き続き所有」の部分ですが、2001年10月1日以降に相続や贈与、また株式の分割や併合などによってその株式を取得した場合にも適用されます。
株式を相続したものの取得株価が分からないといったケースはよくありますよね。この特例以前から、そうした取得費が分からない場合、同一銘柄の株式等ごとに、取得費の額を売却代金の5%相当額とすることも認められています。(実際の取得費が売却代金の5%相当額を下回る場合にも、同様に認められます。)
ここで、上場株式等を譲渡した際の税金について確認しましょう。
株式譲渡の際の課税は申告分離課税といい、そもそもは確定申告が必要なものです。ただし、特定口座を利用している場合は、その手続きを個人投資家に代わって証券会社が行ってくれます。
年間の上場株式等を銘柄ごとに「売却金額-取得価額-譲渡費用」という計算をし、全ての銘柄分の損益を合算します。このとき他の口座の譲渡損益との相殺や配当所得、前年からの繰越控除分とも損益通算できますが、その場合確定申告が必要となります。
この計算結果の課税価格に、現在では10%(所得税7%、住民税3%)の税率を掛けて税金金額を算出しますが、実はこの10%の税率も時限措置で来年、2011年分までで、その後は20%となります。
年内でみなし取得費の特例が終了してしまうと、取得価額の分からない株式については、来年以降の売却の際には売却価格の5%相当額となりますから売却価格の95%が譲渡利益とされます。
2001年10月1日の日経平均株価の終値は9972円ということを考え合わすと、全ての銘柄がそうとは言えませんが、多くの場合このみなし取得価額を利用した方が税金面ではおトクになることが多いでしょう。
もちろん株式の売買は制度に基づいて行うものではなく、相場と自身のポートフォリオとの兼ね合いであるべきですが、その株式を持ち続けるべきかという点の見直しも含めて考えてみるとよいのではないでしょうか。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員
■マネックス証券からのお知らせ (2010年8月5日)
「みなし取得費の特例」のご利用は平成22年12月31日までです
→ http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2010/news10085.htm