従来からいえば、もっと重要視されていると考えられる指標もあるのですが、リーマン・ショック以降、市場の反応が大きい経済指標の代表というと米国住宅関連指標です。
もちろん、米国住宅関連指標はずっと以前から経済指標の中でも重要なものと位置付けられていました。前回も書きましたが、米国では個人消費がGDPの中心でもあり、その回復は住宅販売に表れやすいこと、家電や家具など関連消費にもつながることなどから、米国株式市場にも大きく影響し、米国景気を見る上で先行指標として重要とされるのです。
ご存じのとおり、リーマン・ショックは低所得者向け住宅ローンである「サブ・プライムローン」の回収困難がその原因となって引き起こされたといえます。それだけに、リーマン・ショック以降は、住宅市況の回復こそが米国景気の立て直しに必須である、という市場認識があり、そのために注目度はこれまで以上に高くなり、住宅関連指標の結果による市場の値動きは大きくなっているのです。
主な米国の住宅関連指標は毎月第3週~最終週にかけて発表されます。
以下、発表順です。(・・・発表時期)
・住宅着工件数・・・毎月第3週
・住宅建設許可件数・・・毎月第3週(住宅着工件数の先行指標という位置づけ)
・新築住宅販売件数・・・毎月24日から月末
・中古住宅販売件数・・・毎月25日
・ケースシラー住宅価格指数・・・毎月最終火曜日
このうち、住宅着工指数、中古住宅販売件数はリーマン・ショック以前からも注目度の高い指標でした。住宅着工件数の伸びは住宅市況が好調なことを意味し、家具や家電なでの売上上昇にもつながると判断されます。住宅販売の中でも、米国では中古住宅販売は新築住宅以上に件数が多く、市場規模も大きいため、経済への影響が大きいと言われています。
ケースシラー住宅価格指数は比較的新しい指標ですが、最近は注目度がかなり高まっていて、市場関係者でも分析の参考にしていることが多いようです。住宅着工件数などは商務省(中古住宅販売件数は全米不動産業協会(NAR)が発表)が発表している「件数」の実数ですが、ケースシラー住宅価格指数は民間企業であるファイサーブ社が算出、S&P社が発表している価格指数です。
住宅市況の回復はそのまま米国景気回復(拡大)を映し出すと見られており、それは金融政策における金利引き上げのタイミングに関係してくるものです。当然のことながら、米国FRBもこれら指標には注意しているということです。米国の出口戦略のタイミングについては、他の国々の金融政策にも影響を及ぼすものですから、世界中の市場関係者が見守っています。今後も引き続き住宅関連指標は要チェックといえますね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員
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