今年上半期においては、市場のテーマの上位としてユーロ信用不安や中国の人民元切り上げの話題が目立ちました。BRICsをはじめとする新興国の動きや金や原油などのコモディティ市場の動きも注目されています。ですが、世界経済の行く末を占う場合、やはり米国経済の状況ははずせないものです。
日本株市場の動きですら、日本の経済指標の結果以上に米国経済指標を起因とした米国株や外国為替の変動の影響の方が大きいといえるでしょう。
さて、その経済指標、たくさんありますが、「市場のテーマ・トレンド」が何かを知り、影響の大きい指標を選んで見ることが大切です。米国の経済指標の中でも注目度の高い指標を、改めて説明していきますね。
まずは雇用統計です。数ある経済指標の内でも最も重要なものの一つです。
米国においてはGDPの約70%が個人消費というだけに、個人が安定的にお金を使える状況=雇用の安定は景気を大きく左右し、それはそのまま世界経済に影響を与えることを意味します。
雇用統計は毎月第1金曜日米国東部現地時間8:30に米国労働省より前月分の結果が発表されます。日本時間では標準時で22:30、サマータイムでは21:30です。
失業率・非農業部門雇用者数 ・製造業部門雇用者数・時間当り平均賃金 ・週間労働時間 など詳細な種別に10数の項目以上発表されますが、中でも最も注目されるのは「非農業部門雇用者数」、次いで「失業率」です。
失業率は景気の「遅行指数」と言われ、「今」を映し出すというより景気の変動をしばらく後(一般には半年から1年くらい後)から追いかけるものですが、非農業部門雇用者数は、リアルタイムに農業従事者以外の雇用状況(給料が払われているかどうか)がわかるため、現時点の景気状況を表し、経済動向を把握できると見られています。
米国は日本と異なり雇用の柔軟性が高く、企業は業績が悪化するとすぐに雇用調整に踏み切る傾向があります。そのため企業の景況感と雇用者数は連動することが多く、そのまま業績動向を表すとも言えるのです。
雇用統計の数字が良ければ、市場では以下を期待します。
雇用安定化 → 景気回復(企業業績上昇)・賃金上昇 → 消費回復 → インフレ懸念 → 利上げ
米ドルの買い要因となり、同時に株価上昇につながることが多いです。米国株が上昇すれば、翌営業日の日本株も上昇する傾向があります。
ただし、「数字が良い」というのは、事前に出回る予想に対して良いか悪いかなので、前月比上昇していても、予想より悪ければ「景気回復鈍化」といった反応になるのです。
どの経済指標にも言えることですが、市場に直結する動きは全て「予想より良いのか、悪いのか」であることを確認しておきましょう。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員
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