みなさん、こんにちは。2021年も残り僅かとなってきました。2021年の年初向けコラムでこの1年は「コロナ禍の総決算となる1年」と位置付けましたが、これまでのところ、大きく変動した2020年の相場と打って変わって日経平均では28,700円程度を軸としたボックス圏での推移に終始しています。

過度な悲観や楽観が淘汰され、ウィズコロナ下で求められる微妙かつ慎重な舵取りを反映したような相場展開となりました。

2022年は寅年です。寅年の相場格言は「千里を走る」。ただ、これは躍進というよりも政治、経済で波乱が起こりやすいということのようです。実際、干支別に見た年間の平均騰落率は十二支中で低位にあります。私は2022年を「再始動への産みの苦しみの1年」と位置付けたいと思います。

2021年の相場の振り返り

さて、今回は年末のコラムということもあり、2015年以来続けている「翌年(今回は2022年)の注目すべきテーマト」を取り上げたいと思います。

昨年2020年末のコラムでは、東京オリンピック・パラリンピック、衆議院議員総選挙、そして「宴の後」に注目しました。これらは、いずれも確かに株価に一定の影響を与えました。

東京オリンピック・パラリンピックではやはりスポーツ関連銘柄が値を飛ばし、衆議院議員総選挙では「選挙は買い」の格言通り、その直前の自民党総裁選から市場全体の盛り上がりを見せました。懸念していた「宴の後」についても、中国大手不動産会社の経営行き詰まり懸念は何度か株価のショック安を誘発しています。

しかし、どれもピンポイントでの反応にとどまり、相場の大きなテーマになるほどの「うねり」を持ったものでもありませんでした。大局的にはやはりコロナ禍に振り回された1年であったと考えます。

一方、2020年末に予想できていなかったが、実際には大きなテーマとなったものとしては、海運市況と半導体、原油高、が挙げられるでしょう。特に、海運については年初からその兆しに気づいていただけに、ここでご紹介できなかったのは悔やまれる限りでした。

北京冬季オリンピック、参議院議員選挙、FIFAワールドカップなど2022年開催の大型イベント

それでは2022年はどうでしょうか。主なイベントとしては、2月に北京冬季オリンピック・パラリンピック、夏には参議院議員選挙、11月にはFIFAワールドカップ・カタール大会が予定されています。

これ以外にも、フランス・韓国で大統領選挙が実施される見込みである他、米国では金融緩和規模の縮小(テーパリング)、またこれは考えたくもないのですが、コロナ禍第6波の発生リスクも想定しておくべきでしょう(実際、南アフリカではオミクロン株が発生しています)。

概して、ウィズコロナを前提にしつつも、平常状態への回帰を進めるような1年になると位置付けます。そのような中で私は、イベントではありませんが「コト消費」、「業界再編」、「スタグフレーション」といったテーマに注目したいと思います。本音を言えばこれにインバウンド回復を入れたいところですが、今回は時期尚早と判断します。

2022年は「コト消費」「業界再編」「スタグフレーション」の動向に注目

コト消費は、既に盛り上がりを見せ始めています。緊急事態宣言解除によって人流が回復するにしたがい、コト消費という体験型の「リベンジ消費」が顕在化してきました。

自粛生活の中で必要なモノはかなり買い揃えてしまったこともあり、体を動かすような体験消費に焦点が当てられているのでしょう。いきなり旧に復することはないでしょうが、これまで苦戦に喘いでいた観光業や交通機関には恵みの雨になるものと予想します。

業界再編では、活発なM&Aの発生があるのでは、と予想します。ウィズコロナの世界が不可避との認識が浸透するにしたがい、あらゆるビジネスの手法は大なり小なり変化していくことでしょう。一段の成長に向けて、あるいは先細り回避に向けて、従来の枠組みを変更していこうという流れは加速するものと考えます。

長期のデフレ期間でも業界再編は必至と認識されてきましたが、ウィズコロナ下での社会行動様式の変化定着は再編を強烈に後押しすることになるはずです。既に幾つかの企業で分割や事業売却、MBO、さらには敵対的TOBなども起こり始めました。現在はかつてほどM&Aに対する抵抗感も強くありません。2022年はその動きがもっと加速するものと予想しています。

スタグフレーションはあまり実現して欲しくないキーワードです。スタグフレーションとは景気後退とインフレが同時進行する現象ですが、需要がまだ脆弱な中でエネルギー価格や資源・素材価格の高騰が続けば、1970年代のオイルショック時以来のスタグフレーションとなるシナリオは無視できないと考えています。

特にエネルギー価格は、脱炭素化推進の中で下落要因がなかなか見当たらず、俄かにスタグフレーションの再来が現実味を帯びてきているのです。株式は本来インフレに強い金融商品なのですが、(株式の価値を決定づける)企業業績が圧迫される中ではその強みも相当に阻害されてしまいます。

2022年の寅年の「千里を走る」は波乱の相場とされますが、スタグフレーション懸念が高まると、まさにそういった1年になるのかもしれません。これは要注意だと考えます。