先週、日米共に景気回復の報告(日本においては景気回復宣言の検討)を行いました。日本の月例経済報告において「回復」という言葉が入るのはリーマン・ショック以降約2年ぶりということですが、「緩やかなデフレ状況」は変わらず、本格回復まではまだ時間がかかるという認識とのこと。米国についても「緩やかな改善」であり、力強さには欠け、引き続き景気重視の金融政策をとる模様です。

景気の先行指標である株式相場でのより力強い上昇を期待したいところですが、ここ最近の日米共株式市場は自国内の景気だけで動いているわけではなく、欧州不安がどう収束するのかという外部要因(それによるユーロの値動き)に振り回されている嫌いがあるとことは衆知の通りです。欧州不安そのものについては、実際のところは経済規模の小さい国においての財政不安であり、サポート体制も発表されているという状況にもかかわらず、一種集団心理としての不安感が席巻し、実態以上に市場が右往左往しているとも言えるかもしれません。

さて、景気回復と言いますが、生活実感はといえばこれはもうずっと遅れてやってくるものですから、家計の景気回復はまだまだと感じている方の方が多いことでしょう。企業の業績が少しずつ回復を見せていても、すぐさまボーナスや給与に反映されるわけではありません。

ちなみにサラリーマンの平均年収(国税庁 平成20年)は約430万円で10年前の465万円からほぼ一貫して下がり続けています。働き盛りの30~40代の懐事情(金融資産)はどんな状況かというと、日本FP協会の調べ(2010年1月)によれば、金融資産なしが9.8%、最も多かったのが「100万~200万円未満」の12.6%で、300万円未満(なしを含めて)が50%を超えています。(1000万円以上も18.8%います)貯蓄好きと言われる日本人ですが、現在の貯蓄率は主要先進国の中で最低という状況です。貯蓄をしないで使っているのかといえば、デフレや将来への不安の増大で日本人全体に消費意欲も少なくなっています。(「巣ごもり」といわれる現象に代表されます。)将来を考えると消費より貯蓄と思いつつ、収入そのものが増えない(下がっている)ので貯蓄も増やしていけないという実態が見えてきます。

米国ほど経済の個人消費への依存度は高くなくとも、一般には個人消費が回復することによって、本当の意味での景気回復が進みます。お金は経済の血液ですから、しっかり巡ることによって元気を取り戻していくものです。

実際の家計収支が厳しい中で、「経済のため」にお金を使えとは言えませんが、なんといっても消費も人の気持ち次第。将来への不安が減り、期待感が増えれば消費も動きますし、それは結果として企業の業績にもつながります。「景気回復」という言葉がどこまで現実味をもって個々人に響くのか、ということでしょう。

相場も消費も結局は人の心理次第ということですね。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員