その大きな要因が、ギリシャの財政不安再燃です。
ギリシャの財政赤字はGDP比13%を超え、EUの財政基準である3%の4倍以上です。同様にPIIGS諸国の状況も欧州経済不安に拍車をかけ、ユーロ売り、各国債の金利高騰と格下げ、株価下落などを引き起こしているものです。
昨年暮れくらいから注目を集めているこの事態ですが、ニュースに登場する度、市場は右往左往しています。
先週5日にはアテネで大規模なデモが行われ、社会不安にも広がりかねない状況となり、EUとIMFがギリシャへの協調融資に合意、G7各国も協調して金融支援する見通しです。
一服する可能性もありますが、まだまだわかりませんね。
さて、こうした財政不安―財政赤字となると、どこかの国にでも聞いたような・・・。そうです。我が日本も巨大な債務を抱えた国です。
日本(2009年度末) <財務省データ>
長期債務残高(国) 627兆円程度
GDP比 127%
長期債務残高(国・地方合計) 825兆円程度
GDP比 174%
ギリシャ(2009年見通し) <ロイター記事より抜粋>
債務残高 2970億ユーロ (現在の為替換算で35兆円程度)
GDP比 113.6%
日本の債務残高はPIIGSの一つイタリアを大きく抜いており、純債務残高でも2010年にはイタリアを抜いて先進国(G7中)1位(最大)となることが予想されています。
それだけ見ると、日本こそ危ないのではないか...と思われる方も多いかもしれません。実 際、各種メディアではそういった論調も多いですよね。額面的で見ても日本の方が圧倒的に大きいですし。
でも次のデータもご覧ください。
外国人保有債務の割合
日本 6.8% (国債保有者:2008年12月末)
ギリシャ 77%
ギリシャの最大の問題は外国に対して債務不履行になるかもしれないという点です。
経済格差が明確であるEU圏の中で、統一通貨ユーロを採用して経済活動をしていることは、経済力の弱い国には大きな負担になります。
過去において、自国通貨を無理に米ドルに対するペッグ制をしいていたアルゼンチンはデフォルト(債務不履行)を起こしています。通貨と国力のバランスを欠いてしまうと財務バランスが大きく崩れる原因の一つとなります。
債務の90%以上を国内で消化している日本にはその心配はありません。
日本の個人金融資産は1450兆円もあり、そのほとんどは預貯金・保険で、金融機関を通して日本国債に投資されているのです。
日本の財務バランスが先進国で最悪というのは早急に改善すべき大問題ですが、ギリシャのような財務不安とは別のところにあると考えた方がよいでしょう。消極的選択の結果とはいえ、「リスク回避」で円が買われる現実は市場からはまだ円は信認されているといえますね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員