インフラ全般をプロデュースする建設コンサルタント
建設コンサルタントはインフラ全般に関して総合的にプロデュースやアドバイスを手掛け、発注者をサポートする役割を担っています。発注者の技術パートナーとして、計画・調査・設計のコンサルティングをし、建設会社はその計画に基づいて施工します。国土・地域・都市整備事業の立案、地盤・地質調査や環境評価業務などを通じ、第三者目線で課題を見つけ、インフラ整備を支えています。
日本の建設事業は「設計・施工分離の原則」に基づき、施工は建設業、計画・調査・設計は建設コンサルなどの建設関連業が担います。道路や鉄道などを整備する際、そのインフラは経済合理性があり持続的に発展していけるか、地域住民や環境への影響、工法、コスト、工事期間など、様々な側面を調査したうえで提案します。頻発する自然災害、深刻化する環境問題、インフラ老朽化など山積みする社会的課題の解決に向け、建設コンサルが重要な役割を果たしています。
事業領域が拡大する建設コンサル
政府が進める「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」はインフラの整備や老朽化対策を柱として掲げています。2021年度から2025年度までの5年間で約15兆円を投じる方針で、中長期でもインフラ整備は息の長いテーマになる可能性が高く、建設コンサルは受注の持続的な成長が見込まれます。建設市場では問題が生じた後に対処するという「事後保全」ではなく、重大な影響の発生を未然に防ぐ「予防保全」の重要性が増しています。インフラ整備の需要が増す中で、建設コンサルの事業領域は拡大の一途をたどっています。注目度の高い関連銘柄を以下にまとめました。
道路・橋梁分野に強み持つ「人・夢・技術グループ」などにも注目
総合建設コンサルタントの日本工営(1954)は業界内でもトップの売り上げ規模を誇っています。2021年6月期連結決算(国際会計基準)の売上高と営業利益はそれぞれ過去最高を更新しました。国内事業は国土強靭化関連の案件が多数あったほか、海外事業の業績拡大も寄与しました。国内外の受注拡大に伴い、22年6月期の売上高は前期比11%増の1310億円、営業利益は8%増の77億円と過去最高を連続で更新する見通しです。良好な事業環境もあり、株価は年初から3割近く上昇しています。
DNホールディングス(7377)は今年7月に発足しました。傘下に事業会社として官公庁向けに強い大日本コンサルタント、地質・地盤の調査・解析を手掛けるダイヤコンサルタント(非上場)などを持ち、各社の相乗効果の発揮によって受注のさらなる拡大を目指しています。人・夢・技術グループ(9248)は10月に発足しました。道路や橋梁の設計・調査に強みを持つ長大らを傘下に持ち、他の事業会社との連携強化で総合コンサル化を目指しています。
昨今は台風、豪雨、地震などの自然災害の増加に伴い、建設コンサル関連株は物色されるケースが増えています。今後も災害の激甚化・頻発化、道路や橋梁などの老朽化が見込まれる中で、インフラを縁の下で支える建設コンサルはますます注目される分野となりそうです。