下落要因となったIT関連株の動き
10月後半の中国株は下落しています。10月15日終値から11月1日終値の騰落率は上海総合指数が-0.8%、香港ハンセン指数が-0.7%となっています。
どちらも小幅な下落ですが、半年程度の株価推移で見ると上海総合指数は200日移動平均線も上向きで、緩やかな上昇トレンドの中での横ばい基調、香港ハンセン指数は200日移動平均線が下向きの下落トレンドの中で、一時的に反発したものの、再び大きく下がって50日移動平均線を割り込んだところです。
チャーリー・マンガー氏が率いるデイリー・ジャーナル(DJCO)が7-9月期にアリババ・グループ・ホールディング(09988)の株を買ったことから香港ハンセン指数はIT関連が主導して反発し、10月26日には一時26,234.94ポイントまで戻ったのですが、その後、10月27日から大きく下落しています。
10月27日に株価が下落した要因となったのは、米国の連邦通信委員会(FCC)が国家安全保障上の理由で中国国有の通信大手、中国電信(00728)の米国の事業免許を取り消したこととなります。そのことから、中国のIT関連株のADR(米国預託証券)が米国市場で総崩れとなり、その流れを香港市場がそのまま受け継いだことでした。
10月27日のIT関連株の値動きを見ると、阿里健康(00241)-6.0%、美団(03690)-5.1%、テンセント(00700)-3.0%、アリババ・グループ・ホールディング(09988)-3.0%などとなっており、この日を境に香港株全体の基調も大きく変わり、海外の投資家が資金を引きあげているような印象もあります。
その他、大型株では平安保険(02318)の決算が市場予想よりも悪く、株価は一時50日移動平均線を上抜けていたのですが、再び50日移動平均線を割り込みました。平安保険の1-9月期の業績は純利益が21%減の816億3,800万元でした。減益となった要因は不動産投資を行っている華夏幸福基業投資開発への投資に対する減損処理です。
これは平安保険だけでなく、その他の中国企業にも同じような減損処理が今後発生するのではないかとの懸念に繋がっています。また、7-9月期(第3四半期)に新契約価値(NBV)が30%余り減少したことも嫌気されました。
政策期待により中国本土株は比較的堅調な推移
香港市場が軟調に推移している一方で、前述の様に中国本土株は比較的堅調な推移となっています。
中国本土市場にはアリババやテンセントのような時価総額の大きなIT企業が上昇していないこともありますが、政策期待が株価を保たせている側面もあります。10月18日に中国の第3四半期のGDP成長率が発表されましたが、4.9%増と第2四半期の7.9%増から大きく減速しています。
また、10月31日には10月の中国国家製造業PMIが発表されましたが、49.2と、市場予想の49.7や前月実績の49.6を下回りました。非製造業PMIも52.4と市場予想の53.0や前月実績の53.2を下回りました。
これらの結果を受けて、中国当局が景気を保つ為の景気刺激策を打ち出すのではないかとの期待感が高まっています。また、中国人民銀行(中央銀行)の動きを見ていると、10月最終週の公開市場操作では6,800億元の供給超過となっており、流動性を供給しています。
なお、その他の経済指標を見ると、9月の小売売上高は前年比4.4%増と市場予想の3.5%増や8月実績の2.5%憎を上回りました。一方、鉱工業生産は前年同月比3.1%増と市場予想の3.8%増や前月実績の5.3%増を下回り、固定資産投資も年初来で7.3%増と、市場予想の7.8%増や前月実績の8.9%増を下回っています。また、中国では新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念されているところでもあります。
以上、中国の景気状況は決して強い状況ではないのですが、その分、政策期待が高まっているところでもあり、本土市場は比較的堅調な株価推移が続くのではないかと予想されます。