インフラは新設から維持・更新の時代へ
日本の社会インフラは1950~70年の高度経済成長期に整備された施設が多く、今後は老朽化が一段と進む見通しです。国土交通省(以下、国交省)は建設後50年以上が経過したインフラの割合について、2023年に道路橋が39%、トンネルが27%、下水道管渠(かんきょ)が8%に達すると試算しています。これが33年には道路橋が63%、トンネル42%、下水道管渠が21%に上がるなど、インフラ老朽化の問題は深刻度が増していきます。特に近年は自然災害が激甚化・頻発化する中で、インフラ施設が防災効果を発揮できるよう、平時から適切なメンテナンスを実施する意義が大きくなっています。
国交省は2018年に所管のインフラ施設を対象に今後30年までの維持管理・更新費を試算しました。その結果、インフラに不具合が生じてから対策する「事後保全」の場合は、30年後の1年当たりの費用が18年度と比較して約2.4倍となる見込みを示しました。一方で不具合が生じる前に対策する「予防保全」を基本とした場合は、約1.3倍の増加になり「事後保全」と比較すると約5割のコストが減る見込みです。単純な建て替えだけでなく、将来の維持管理・更新費の抑制のためにも予防保全型のインフラメンテナンスに転換し、インフラの長寿命化を進めるのが重要になっています。
老朽化への対応が重要テーマに
国交省は8月にインフラ施設の点検結果(2019年~20年度)を発表し、橋梁は約2万ヶ所超、トンネルは約1000ヶ所が老朽化などで鉄筋の露出や腐食が生じているとの調査結果を公表しました。高度経済成長期に建てられた道路や橋などが更新期を迎え、インフラの更新は真っ先に進めるべき重要テーマとなっています。
政府が国土強靭化の取り組みを進める中で、インフラ老朽化は株式市場でも注目されるテーマとなっています。恩恵を受ける建設業界は裾野が広く関連銘柄も多岐にわたりますが、特にインフラ老朽化の中で話題に上がることの多い「道路」「橋梁」「水道管」を中心に関連銘柄をまとめました。
専門分野に特化した企業に注目、業績貢献の高さが市場で注目も
道路や橋の老朽化関連として、ショーボンドホールディングス(1414)への注目度が高まっています。道路や橋、トンネルなど社会インフラの補修・補強を専門とする「総合メンテナンス企業」で、工事の大半は耐震補強や老朽化に伴う補修・補強が占めています。NIPPO(1881)は道路舗装業界の最大手で、道路舗装の主要原材料であるアスファルト合材の工場が全国にあります。
鋳鉄管メーカーの日本鋳鉄管(5612)は水道管向けの売上高が大半を占めています。最近では首都圏直下で最大震度5強の地震を観測し、水道管が破裂するなどの被害がありました。上下水道向けで強みを持つ同社に引き合いが増えるとの思惑で物色が向かい、株価が急騰しました。水道管は法定耐用年数が40年とされ、更新需要がますます増える可能性が高く、活躍の場が一段と広がりそうです。
今年に入って最も株価が上昇しているのが川崎地質(4673)です。10月14日に発表した2020年12月~21年8月期決算をみると、営業利益は前年同期比4.2倍の5億5700万円でした。同社は建設工事に関連する地質・土地調査を手掛けています。国土強靭化など公共事業関連の受注が好調で、道路や下水道の維持管理や防災関連の業務に注力したことが収益拡大に寄与しました。
上記でまとめた銘柄はインフラ老朽化への対応に強みを持つ専門的な企業中心です。総合的に建設工事を手掛ける大手ゼネコンなどと比べ、専門分野に特化した企業であれば業績への貢献度が高いといえます。今後の受注状況などによっては、株式市場でさらに注目を集める企業が増えてくるかもしれません。