日曜日の日経新聞で外国為替証拠金(FX)取引のスプレッドについての記事があったのを読んだ方も多いのではないでしょうか?
気軽に始められる方も多い人気のFX取引ですが、「スプレッド」「ビッド」「オファー」云々といった言葉にハードルを感じられてしまう方も多いようです。

外国為替というのは株価などと異なり「一価」ではありません。しかも外国為替市場は常に動いてるだけではなく、相対市場であるためそのレートは「どこで聞いても同じ」というわけではないのです。
まず「一価」ではないということですが、同じタイミングで「売値」と「買値」が存在するからです。株価であれば、売るにしても買うにしても、市場価格は一つですね。でもFXでは投資家から見て、買うときのレートと売るときのレートが異なるということです。

この投資家から見た買いレートを「オファーレート(業者から見て売値)」、売りレートを「ビッドレート(業者から見て買値)」といいます。このビッド・オファーのレートの差を「スプレッド」と呼びます。
売値と買値の値が近ければ近いほど、(スプレッドが狭い(小さい)ほど)投資家から見ればコストが安くなることを意味し、投資家にとって「良いレート」となります。
買ったものを即時に売ろうとしたとき、もしレートが動いていなければ、そのスプレッド分だけ損失が出ることになります。そのためスプレッドが狭いと「コストが安い」と言われるのです。
よく比較される銀行などで外貨預金をするときに使われるTTS、TTBレートも同じ考え方です。TTSレートは銀行がSelling=売るレート=投資家(個人)の買値、TTBレートは銀行がBuying=買うレート=投資家(個人)の売値ですから、オファーレート、ビッドレートと同じ意味になります。通常TTSレート、TTBレートは仲値をはさんでそれぞれ1円ずつ離れており、二つのレートの差は2円ということになります。
同じ外国為替レートのスプレッドとして考えると大きな差ですよね。

では銀行が手数料を取り過ぎているのか、というとこれも少し違います。TTS、TTBは朝10時に仲値レートが決まるとよほど市場が大きく変わらない限り、原則1日同じレートを使用します。常に動く為替市場のレートのリスクを1回の値決めで取っているためスプレッドが大きくならざるをえないという背景があります。(とはいえ、個人的には2円は大きすぎると思いますけれど・・・)

では同じ個人投資家向けのFX取引でわずか数銭のスプレッドで提示できるのか、といえば、常に動く為替レートのリスクを取引する個人投資家が自ら取るからなのです。
同時に日経新聞の記事にもあった「スリッページ」の可能性があることも明示されています。スリッページというのは提示しているスプレッドが例えばわずか2銭であっても、為替市場が荒れているときなど、実際取引をすると提示レートより悪いレートで成立してしまうことです。FXの業者は顧客からの注文を為替市場でカバー(顧客がドルを買う場合は市場でドルを調達してきます)しますので、当然のことながら市場が大きく動いているときなど提示通りのレートでは提供できなくなることがありえるのです。
FX取引の場合、いくらまではこのレートという制限はありません。プロの世界(インターバンク市場)であっても、市場が荒れているときや、金額が大きいときはスプレッドが多少ワイドに(広く)なるのは当然のことです。それだけ瞬時にカバーをするのが大変になるからです。
いくらの金額を取引されるかわからない、相場が荒れるかもしれない、という状況で、むやみにスプレッドを狭く提示することを約束している業者は、一体どうやってカバーしているのか、そのリスクをどう管理しているのかという疑問を感じずにはいられません。

「コストが安い」ということを売り物にしているところはたくさんあります。事実ではありますが、その裏にあるリスクを考えて取引業者を選ぶことが大切ですよね。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー