中国恒大集団を巡る株価の動き

9月中旬の中国株は反落となっています。9月6日終値から9月20日終値(中秋節で9月20日~21日の中国本土市場は休場のため、上海総合指数は9月17日終値)までの騰落率は上海総合指数が-0.2%、香港ハンセン指数が-7.9%となっています。

上海総合指数は一時大きく上昇し、9月14日には一時3,723ポイントまで上昇しましたが、その後、大きく調整しています。

一方、香港ハンセン指数は9月8日に50日移動平均線近くまで戻したのですが、そこで綺麗に上値を抑えられる形となり、その後は急落が続いています。

中国本土市場も香港市場も株価が調整している理由はいくつかありますが、一番の要因は中国の大手不動産企業である中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)(03333)を巡る混乱です。

同社は中国の大手不動産会社ですが、積極的に借り入れを行い、大量の不動産を開発しては、完成する何年も前から事前の販売を行ってきました。しかし、それが行き過ぎて、近年では事前販売した資金で利払いを済ませるという自転車操業状態になっていました。

そこにきて、中国当局が不動産バブルを抑える政策を打ち出してきました。具体的には不動産会社による積極的な資金調達に待ったがかかったわけですが、このことによって中国恒大集団は資金繰りの目処がつかなくなりました。ひいては、未完成物件の購入者が、その不安感から同社に押しかけるような状態になっています。

中国恒大集団の幹部によると、最終的には政府系の国営不動産会社に引き継がれる形になると予想されるものの、同社のような民営企業で大きく成長した企業を中国政府が本腰を入れて救済する見込みは低く、中国当局がどのような形で債権者や未完成物件などに対しての処理を行うのか、といった点が焦点になるとのことです。

ちなみに中国恒大集団の株価は8月末の4.36HKDから9月20日には2.28HKDまで急落しており、下げ止まりの気配が見えません。また、中国政府の不動産市場に対する規制強化への懸念から碧桂園(02007)など中国本土の不動産株全体も大きく調整しています。

香港の不動産ディベロッパーやマカオ株も大きく下落

中国当局の不動産企業に対する規制策の影響は中国本土の不動産銘柄だけでなく、香港地場のディベロッパーにも波及しています。

ロイターによると、中国当局は香港の大手不動産企業を集め、中国政府への協力と、香港の住宅不足の解消を指示したとのことです。これにより、香港地場の不動産ディベロッパーの業績が悪化するのではないかとの懸念から恒基兆業地産(00012)や新鴻基地産(00016)などの不動産銘柄が大きく下落しています。

中国政府の狙いは香港の貧富の格差縮小で、今回の規制強化は住宅価格の高騰を抑えるためのものと見られますので、今後も香港の不動産ディベロッパー銘柄は調整が続きそうです。

また、香港は狭い土地に人口が密集している地域ですので、不動産価格が非常に高価になっている側面があります。香港政府の収入も5分の1以上が土地の売却によるものであり、それが香港政府の収入を支え、低税率などの政策を維持できた理由であることを考えると香港経済全体にも影響が及ぶ可能性があります。

9月中旬はそれ以外にマカオ関連銘柄も大きく下落し、IT大手企業への規制強化も続いています。マカオ関連銘柄に関しては、こちらも中国当局の規制強化が原因で、2022年6月に予定されているマカオのカジノ運営ライセンスの失効を前に、中国当局がカジノ事業者を管理監督する代理人を導入すべきとの方針を示したことによります。

これによって9月15日の香港市場では金沙中国(01928)が-32.5%、銀河娯楽(00027)が-20.0%の株価下落となるなど、カジノ関連が大幅安となりました。

一方、中国大手IT企業への規制強化も続いております。中国のネット大手企業に対して他社サイトへのアクセス遮断が禁止されるほか、アリババ・グループ・ホールディング(09988)に対し、グループ傘下であるアント・グループが運営する電子決済アプリ「アリペイ」を分離させる意向が示された、などの情報があります。

中国恒大集団問題への懸念は米国株などにも波及しており、目先は中国当局の規制強化懸念で軟調な株価推移が続く見通しです。