先週末のシカゴCME日経平均先物は2万9935円で引け、10日の大取終値を225円下回った。米国市場でダウ平均が271ドル安と5日続落し、7月20日以来の安値となったことに連れ安した。週明けの東京市場では利益確定売りが優勢になりそうだが、最近の日本株は米国株安に連動しなくなっている。景気回復が遅れる懸念で下げている米国株と経済再開の見通しが立ってきた日本とでは景況感のサイクルが違う。売り一巡後は下げ渋るだろう。日経平均が3万円の節目を割らずに底堅さを見せれば、徐々に買いが膨らむような展開となるのではないか。

足元の相場のサポート要因は政策期待だ。自民党総裁選の告示日である17日を週末に控えて、政策期待が盛り上がるだろう。河野太郎行政改革担当相は10日、総裁選への立候補を正式表明した記者会見で「平時の改革、有事の財政。未来に向けた投資が必要だ」と述べた。岸田文雄前政調会長は8日の政策発表会見で数十兆円の経済対策に言及した。「サナエノミクス」を標ぼうする高市早苗前総務相は、物価安定目標2%の達成まで基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標を凍結し、積極的な歳出拡大を続けるべきだと主張。

野党も衆院選を意識して政策を押し出している。立憲民主党の枝野幸男代表は7日に発表した政権公約で、コロナ対策として最低30兆円規模の財政支出を伴う補正予算を編成する考えを示した。国民民主党も以前から総額50兆円規模の経済対策を盛り込んだコロナ対策を掲げている。

これらの「大盤振る舞い」宣言は、リップサービスの部分が少なくないとわかっていても、市場のカンフル剤になる。このご時世で財政再建などを掲げて選挙に勝てるとは誰も思わないので、少なくとも衆院選が終わるまで緊縮路線は封印されるだろう。

今週の指標で注目されるのは14日発表の米国のCPI(消費者物価指数)だ。8月の雇用統計では平均時給が市場予想を上回る高い伸びとなったことでインフレ圧力が意識されている。先週公表されたベージュブック(地区連銀経済報告)でも一部で賃金や物価の上昇ペースが強いと報告された。NFPの下振れでテーパリングのスケジュール感はいったん後ずれしたが、CPI次第では9月FOMCで頭出し、11月FOMCで決定、12月からテーパー開始という見通しが再びメインシナリオとして台頭するかもしれない。

国内では7月の機械受注が注目される。民間設備投資の先行指標となる船舶・電力を除く民需の受注額の市場予想は前月比2.7%増と6月の1.5%減から好転する見込み。

注目イベントはアップルが米西部時間14日午前10時(日本時間15日午前2時)からオンラインで開催する特別イベント。iPhoneの次期モデルなどを披露するとみられており、関連銘柄が動意づくきっかけになりそうだ。

リスクは米国株市場の調整がさらに続き、一段と深いものになること。ただナスダック総合は25日移動平均より上で推移しており、米国株全体が大きく下げているわけではない。ダウ平均は26週移動平均の3万4400ドル台でサポートされると見ている。

まとめると今週の日本株相場は高値警戒感から利益確定売りに押される場面もあるが、基本的には政策期待を背景に堅調に推移するだろう。TOPIXはすでに年初来かつ31年ぶり高値。日経平均も今週中にも2月につけた高値を更新するだろう。