中国の経済指標は予想を下回る結果

9月初めの中国株は上昇しています。8月30日(月)終値から9月6日(月)終値までの騰落率は上海総合指数が+2.7%、香港ハンセン指数が+2.4%となっています。

上海総合指数、香港ハンセン指数ともに、8月31日(火)には一時大きく下落しましたが、そこから切り返し、ローソク足を見ると下髭つけての上昇となっています。

この日には、8月の中国国家製造業PMIが50.1(市場予想50.2、7月実績50.4)、中国国家非製造業PMIが47.5(市場予想52.0、7月実績53.3)と、市場予想や前月実績を下回る経済指標が発表されました。

しかし、弱い経済指標は最終的に中国当局の景気刺激策に繋がるとの期待感が生まれ、株価上昇につながった様子です。実際のところ中国交通建設(01800)などインフラ関連株が大きく上昇しています。

香港ハンセン指数はIT関連株が大きく上昇

また、香港ハンセン指数についてはIT関連株が大きく上昇しました。米国でナスダック市場が好調だったこともあり、4-6月期(第2四半期)決算が予想を上回った美団(03690)が+9.0%と大きく上昇しました。

それがきっかけとなり、8月31日(火)を境にアリババ(09988)が+4.6%、阿里健康(00241)が+7.0%、テンセント(00700)が+3.3%など、これまで軟調だったIT関連株が底を打ったような形のチャートになっており、その後も上昇が続いています。

最大の時価総額を持つ銘柄であるテンセント(00700)は9月6日(月)に終値ベースで5月以来、初めて50日移動平均線を上回っています。

一方、平安保険(02318)は8月31日(火)に不動産市場への投資について中国当局から調査されているとの報道から-3.8%と売られ、その後も軟調な推移が続いています。

中国政府は上昇し続ける不動産価格が格差拡大に繋がるとして、不動産市場における規制を強化しています。本土不動産大手の万科企業(02202)は政府の規制によって不動産市場が2021年後半に悪化するという見通しを発表しています。

習近平氏が掲げる「共同富裕」政策の影響

ところで、IT関連株の株価が戻してきている理由の1つに、習近平国家主席の掲げる「共同富裕」政策にIT大手企業が応じ、資金提供を続けていることがあります。

共同富裕とは格差をなくして全ての中国の国民が富を享受するように導く政策です。例えば、テンセント(00700)は「共同富裕」支援に500億元の寄付を発表しています(なお、テンセントは4月にも「持続可能な社会的価値イノベーション」戦略の支援に500億元の寄付を発表しています)。

アリババ(09988)も2025年までに1000億元を寄付することを発表しており、今後は他のIT大手企業も「共同富裕」への支援を発表するのではないかとみられます。

もちろん、巨額の費用を投じることになりますので、業績に悪影響が出るかもしれません。しかし、これらのIT大手企業の業績が堅調に拡大していることや財務内容を考えると、根幹を揺るがすほどの状況にはならないものと思われます。

むしろ、当局の政策に従うことによって、激しい罰則等をこれ以上課される可能性が低くなるメリットの方が大きいとも考えられます。そのような背景もあって現在、株価が反発しているように思います。

一方、中国政府による不動産業界への規制は、もう少し続きそうです。8月31日(火)に中国政府は都市部の家賃の値上げを年5%に制限する方針を打ち出しました。都市部で働く若者にも無理のない家賃水準を目指すとのことで、これも共同繁栄構想に基づく政策です。

万科企業(02202)が指摘するように、今後、不動産価格の上昇を抑える政策も出てきそうです。もっとも、これらの規制強化は短期的に不動産セクターに大きな影響を及ぼすかもしれません。しかし、長期的にみれば、中国の大衆消費を引きあげることにも繋がると予想されます。

そのため、私は中国経済や中国株について悲観的に考える必要はないと思っています。