菅首相の退陣報道で蘇る1年前の記憶

株式市場はジャクソンホール会合や米雇用統計の発表が終わり、次の焦点はFOMC(米連邦公開市場委員会)となるはずでした。そうしたところ、先週末の9月3日(金)に菅首相が自民党の総裁選に立候補しないとの報道が伝わりました。日本株に関しては、誰が次の首相になるかというところで、思惑絡みの動きが予想されます。

当日、筆者はちょうどラジオ番組出演に向かうべく電車に乗っていた時に、この報道を知りました。報道を目にしてすぐに思い出したのが、1年前の出来事でした。

2020年8月28日(金)に安倍首相(当時)の辞任報道で荒れ相場になったのが、まだ鮮明に記憶されています。当時、夕方の記者会見を待たずして、後場の取引時間中に速報が流れました。その際も、筆者はラジオ番組に出演中で、株価の急落に対するコメントにかなり躊躇した記憶があります。

TOPIXは長期の上値抵抗線を上抜ける可能性も

さて、日経平均が2月につけた年初来高値から低迷が続く中でも、TOPIXは高値圏で三角保ち合いを続けていました。1つのトレンド上で三角保ち合いを形成する場合、一段高につながるケースが多いといわれるチャートの見方があります。

その三角保ち合いを上放れていく理由が、少し明らかになってきたような気がします。週明け9月6日も日本株は大幅続伸となり、TOPIX は約31年ぶりの水準まで上昇しました。

実は、TOPIXをより長い期間でみると、バブル崩壊後、1994年につけた戻り高値を起点にその後の高値をつないで延長した上値抵抗線が、2021年の高値水準と概ね一致していました。つまり、8月までは長期の上値のフシで頭を抑えられていたことを意味しており、そこに米主要株価指数が上昇しても簡単にはついていけない理由の1つがあったのです。

しかし、TOPIXは年初来高値更新と同時に、長期の上値抵抗線を明確に上抜けていく可能性が高まっています。ここから上の水準は、大半の現役投資家が経験したことがない新しい株価ゾーンです。これまでの物色の変化や新しい事象がみられる展開に期待したいところです。