本日の日経新聞1面に「節約消費のパラドックス」という記事がありました。ご覧になった方も多いかもしれません。昨年末以降、急速に強まった雇用不安から家計心理が冷え込み、消費行動が変化してきている、というものです。
経済とは「お金」、「モノ」、「サービス」の流れのことと言われますが、それらを動かしているのは「ヒト」であり、そのヒトの考えや感情が大きく影響するものです。
経済と聞くとなんだか難しく感じますが、ヒトが感じ、考え行動する結果、モノやお金やサービスが動いていることを考えればぐっと身近になりますよね。皆さんお一人お一人の考えにもとづいた行動の結果が「経済指標」に表れてくるものなのです。 

さて、家計心理が冷え込んできていることは、新聞にもあるとおり消費者態度指数の急落という形ではっきり表れています。

消費者態度指数というのは「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」、
「耐久消費財の買い時判断」の4つの意識指標から構成され、5,000世帯以上に実施される消費動向調査から計算されます。
最新のものは昨年12月のものですが、上記4つの意識指標は全て低下、なかでも「雇用環境」は大幅な低下となっています。

消費動向調査(全国、月次)(内閣府)の詳細はこちら>>
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/2008/0812shouhi.html

昨年末から派遣問題、内定切り問題と雇用に関連するニュースが相次いでいますが、雇用不安は生活の軸に直結するだけに深刻です。正規社員の雇用や賃金へ影響が出てくることを予想すれば、自ずとサイフの紐は固くならざるをえないでしょう。

消費動向調査の中で、サービス等の支出に対し、今後増やしたいもの、減らしたいものについての調査もあります。自己啓発費や家事代行サービス(ハウスクリーニング、食材配達、ベビーシッター、ホームヘルパー等)などは大きくマイナスになっていないのですが、レストラン等外出費の項目は最も大きくマイナスになっています。
そういった結果に対し、インターネットの料理レシピ・サイトへの訪問者は大きく伸びていると聞きました。外食にお金をかけられない分、内食を少しでも楽しもうという姿勢があるのかもしれませんね。

代替のものを活用することで、少しでも生活を「豊か」に「楽しく」していこうという姿勢は経済の根幹である「ヒトの心理」を前向きにしてくれるものです。
そうした中で新たなニーズが生まれ、新たな産業が育つこともあるもの。新聞にも安売り型の小売りは大きく伸びていることが記載されています。
景気が停滞してくると、全てがダメになってきてしまうようなムードが漂います。たしかにマイナス部分が大多数になるのは事実ですが、「全て」がマイナスというわけではないのです。

こうしたご時勢においては、個人の自己防衛のひとつとして、何事においても「代替」を見つける努力が必要なのかもしれませんね。
投資や運用についても同様です。もちろん、「代替投資」といってもいわゆるオルタナティブ投資という意味ではなく、これまでに馴染んで投資してきた資産や投資方法とは異なった何かに目を向けてみる、という意味です。
日本株ばかり投資してきた方が外国債券を保有してみたり、長期投資だからと再投資型の投資信託しか保有しなかった方が分配型の投資信託の良さに注目したり・・・。

「節約」「倹約」ばかりではなく、私たち一人ひとりが何か新しい取り組みをすることで心理を前向きにもっていきたいですね。

廣澤 知子
マネックス証券 
シニア・フィナンシャル・アドバイザー