先週の金曜日、日本株も大きな下げを記録しましたが、個人的には為替相場の大相場が大変印象的でした。ドル円相場の90円割れ・・・95年8月以来とのことです。実に13年以上ぶり。クロス円も軒並み大幅安。

米国自動車大手3社(ご存知、ビッグスリー)の救済案について議会での協議決裂というニュースから、リスク回避で円に資金が集中した結果です。その後、米政府による別の支援策が報道されて海外市場で相場が戻されました。ちなみに米国株も大きく売り込まれた後に戻し、最後はプラスで終わっています。

このように大きく動いて、結果としては元に戻っているような状況を「行って来い相場」と言います。今年の3月にドル円が95円台をつけたときに「行って来い相場」について書いています。
http://lounge.monex.co.jp/column/money/2008/03/24.html

それにしても13年ぶり。95年といえば、95年4月の史上最安値である80円割れを記録した年です。当時は現在のようにFX取引に個人投資家が参加していませんので、市場参加者はプロばかりです。

当時ディーラーだった方から「急速な下げのとき(95年4月に向けて)はこわくてロング(買い)には行けなかった」と聞いたことがあります。(ちなみに95年8月は円高が解消に向かっていたので、反転して買いに行っていたと思いますが。)

対して、個人投資家は積極的だな、と思います。急速な下げがあると下げの流れに乗って「ショート(=売り)」をする方より、「ロング」のポジションを作る方が多いようです。落ちたところをすかさず拾って上昇を待つ、というスタイルです。
買いも売りもできるFXですが、売りにはコストもかかりますし、FX取引が個人投資家に浸透していった時期は、為替は円安に向かう右肩上がりであった上、通貨間、特に円との金利差が大きく、外貨を買ってスワップを稼ぐというスタイルに人気がありましたので、「買い」から入ることに慣れ親しんだ方が多いということもあるのでしょう。

個人投資家の積極的な買いにより、為替相場がある程度買い支えられるようになったのではないか、とも思います。今やそれほどまでに、為替のマーケットにおいても個人投資家の存在感は大きくなっているようです。

ところで、先ほどショートにするときにはコスト(=スワップの支払い)がかかることに触れましたが、ご存知のとおり、世界中の利下げが加速しており、日本は相変わらずの超低金利であるものの金利差は小さく、すなわちコストが大幅に安くなってきています。

米ドルに限っていえば、いまや短期金利の目標レートが日本のそれとほぼ同じ、つまり金利差はほとんどないに等しいのです。日によってロングにしたときにスワップの受けもあれば、払いもあるといった状況です。つまり従来型のロングにするとコストがかかることも。逆に下げの局面でショートに挑戦するとスワップを受ける結果になることもあるわけです。
ポジションを作る際はぜひ注意してスワップを確認してくださいね。

廣澤 知子
マネックス証券 
シニア・フィナンシャル・アドバイザー