ご存知のとおり、10月の世界同時金融危機以降(正確にはその前の9月頃から)、各市場の値動きは大変大きなものとなっています。
為替市場も激しい値動きの中、奇妙な現象が起こりました。
FX取引をされている方にはお馴染みのスワップに異変があったのです。
FX取引に馴染みのない方もいらっしゃると思いますので、まずはスワップについて簡単に説明しましょう。
スワップというのは、一言でいえば二国間の金利差です。「金利差」といってもイメージしにくいかもしれませんので、外貨預金を考えてみてください。 皆さんが外貨預金をするときの魅力は何でしょう?円より高い金利を受け取れることにありますよね。国によって金利水準は異なり、ある国の通貨を「買う」ことでその国の金利を得ることができます。

そもそも外国為替は二国間の通貨の交換レートです。為替取引(FX取引)においても、その通貨に付随した金利は無視することはできません。

ある国の通貨を買えばその国の金利を得ることができる反面、交換した通貨の金利を支払わなければならなくなります。
スワップとは為替取引におけるこの「金利差」のことなのです。この金利差分を日割にして、受払いを行います。

ご存知のように日本はずっと世界最低水準の金利ですので、どの国の通貨に対しても、比較すれば金利は低く、上記のFX取引に当てはめれば、どの国の通貨を買っても、日本の金利との差額分(スワップ)を「受け取る」ことができています。
円を売って外貨を買うことでその金利差を受け取る、というのは世界中の投資家が行っていた手法で、円キャリー・トレード(低い金利で円を借りて、外貨に換えて投資する取引)と呼ばれました。

ところが、ここ1~2ヶ月で世界的に利下げ傾向となり、先週も欧州各国が一斉に利下げを行いました。日本も利下げをしていますが、円との金利差は小さくなっています。
こうなると円キャリー・トレードの甘みも薄れますので、海外の投資家が「円キャリー・トレードをやめる(巻き戻し)=円の借金を返す=円を買う」という取引を行ったことで、直近、日本株が売られているのに円高の勢いが止まらないという現象の一因となっていたと考えられます。

さて、そんな中、先週、スワップの異変は起こりました。
米国が利下げをしたとはいえ、政策金利は日本の0.3%(翌日物無担保コールレート)に比べ米国は1.0%(FFレート)と米国の方が金利は高いにも関わらず、金利差であるスワップが逆転現象を起こしました。
つまり米ドルを対円で買うとスワップを受け取れていたはずが、米ドルを売ることでスワップを受け取れるという現象が起こったのです。

それだけ短期金融市場が混乱していたということです。一時的だったと断言したいところですが、米国短期金利市場は非常に不安定で、まだ何ともいえないというのが正直なところです。世界の投資家の動きや、米国金利市場の混乱が、こうして私たち個人の取引にも大きく関係しているのですね。

ぜひ、飛び交うニュースの裏で何が起こっているのか気をつけて見るようにしてください。自身の投資に知らず、知らず影響を与えていることもありますし、そうした繋がりを知ることで、市場を見る目が養われていくものだと思います。

廣澤 知子
マネックス証券 
シニア・フィナンシャル・アドバイザー