ここのところ世界中のあらゆる市場が乱高下し、景気の見通しも変わってきています。
つい先日まで、原油をはじめとする資源価格の高騰が個人の生活を直撃し、生活観としてもインフレを感じていました。
それがほんの一月足らずの市場の激変の中、早くもデフレを心配する声が上がってきています。(原油価格もピークの夏ごろの半分以下をつけました。)
様々なニュース等を耳にするにつけ、どんどん不安になり、何をすればよいのかわからなくなってしまうことも多いことでしょう。
そんなとき、自分の資産に直接関係のないニュースにも動揺して、その結果、必要ないどころか、よりマイナスになるような行動をとっている方も中にはいるようなのです。

例えば、債券の中途売却をする方が増えてきていると聞きます。
債券は償還前に途中で売却することができる商品ですので、売却そのものは、問題ありません。ただ当社においての債券投資の場合、その多くは償還まで保有することを目的にされていますので、その理由が気になります。
中途売却が必要であるケースは次のようなことが考えられます。

1.株式市場が値下がりしているので、購入の好機。その購入資金を確保する  ために債券を売却して現金化。
2.信用取引、FXなどレバレッジの大きい取引をしていて、相場の激変により  追加保証金を差し入れるために現金が必要。
3.外国為替相場が円高になっているため、為替差損を嫌気して現金化。4.生活資金のため現金化。
5.とにかく債券を保有していることが不安で現金化。

1は、リバランスの一つです。全体の資産配分の中で資産の種類が偏りすぎないようにバランスがとれているかを確認することが大切です。

2は、投資を続けていく上ではある意味、仕方のない行動です。ただし、そのポジションを継続するためにどんどんと追加資金を投入される方もいるようですが、はたしてそのポジションは保有し続けるべきものかどうか、再度見直してみてはいかがでしょうか。
ロスカットがいや、という感情に流されずに、持ち続けるに値しないポジションはきっちりと見切る潔さも必要といえるでしょう。

3は、上記に書いたような、ある意味潔い判断なのかもしれないのですが、ちょっと角度を変えて考えてみてはいかがでしょう?
債券は保有していることでコストがかかる商品ではありません。当社では外貨決済サービスがありますので、円高になったからといって償還時に元本を割った日本円を手にしなければならないというわけではないのです。償還金を外貨のまま保有し、円安になるタイミングを待つことも可能です。
また、世界的に金利低下傾向になる今、金利が高めの頃に発行された債券であれば、現在より高めの水準のクーポン(利金)を約束されているものです。それを中途で止めてしまい、かつ、日本円に戻すことで(外貨決済サービスは中途売却には使用できません。)為替差損を実現損としてしまうことになるのです。
差し迫った理由がないのであれば、今しばらく利金をもらいながら様子を見ることをもう一度考えてみてはいかがでしょう?

4は、個人の家庭の事情によるものですので、残念ですが仕方ありません。逆に投資にこだわりすぎて、生活資金を借金で賄うようになることのほうが問題ですので、ご注意ください。

5は、もう一度冷静に考えることが必要ですね。
債券は、発行体が破綻して債務不履行にならない限り、原則償還時に額面金額が戻ってくるものです。
先月リーマンという巨大金融機関の破綻に直面して、「信用リスク」に対し過敏になられた方も多いかと思います。ただ破綻するということは、巨額の借金があったり、巨額のリスク資産投資をしていたり、とそれ相応の理由があることが原因です。株価下落=企業の破綻ではありません。落ち着いて背景を見るようにしてみましょう。
債券の償還までの期間、発行体のリスクを天秤にかけ、冷静に、慌てないことが大切です。

どんな投資にもいえますが、保有していることと、現金化することにどちらが自分に必要なのか、どちらがよりコストがかかるのか、メリット・デメリットをよく考えるようにしたいですね。
廣澤 知子
マネックス証券 
シニア・フィナンシャル・アドバイザー