液晶、有機ELに続く次世代のマイクロLEDディスプレー

技術革新や映像コンテンツの進化とともにディスプレーの進化が進んでいます。大型テレビやディスプレーも従来の液晶からより高画質・高精細で、バックライトを使用しないため消費電力が少ない有機EL(OLED)ディスプレーが普及しつつあります。

さらに次世代のディスプレーとして注目されているのが微細な発光ダイオード(LED)で画像を表示する「マイクロLED」ディスプレーです。マイクロメートル(μm、1000分の1ミリ)サイズの自発光型のLEDを平面上に敷き詰めた構造です。

発光体の光をフィルターを通して表示する液晶や有機ELに比べて、高解像度・高輝度なうえ画面の色の変化にかかる時間である応答速度が速くディスプレーデバイスとして性能が優れています。さらに有機ELと同じくバックライトを使わないため消費電力も少なく、視野角も広いといった特徴を持っています。

このような特性をいかし、大型モニターやウェアラブルデバイス、VR(仮想現実)ヘッドセットディスプレー、スマートグラスなどでの活用が期待されています。

出所:株式会社QUICK作成

ディスプレー・照明で活用されているGaN

ディスプレー技術の進化に伴って期待されるのが、化合物半導体であるGaN(窒化ガリウム)の需要増加です。GaNは構成元素を調整することで紫外光から青色まで光を制御することができ、青色LEDの素材として用いられています。また青色をベースにした白色LEDは高効率、低消費電力、高寿命の照明としても使われています。

高出力のLEDは赤色・緑色が20世紀には実用化されていましたが、青色LEDは加工が難しいことから研究開発が難航していました。しかし故赤﨑勇氏、天野浩氏、中村修二氏らがそれぞれ長年にわたり地道な研究を進めた結果、実用化にメドがつき現在では薄型ディスプレー、照明など幅広いシーンで青色LEDが採用されGaN半導体の需要も強まりました。2014年にはGaNを用いた「明るくエネルギー消費の少ない白色光源を可能にした高効率な青色LED」の発明で各氏がノーベル物理学賞を受賞しています。

マイクロLEDディスプレーの実用化にはGaNを用いた青色・白色LEDが不可欠なため、将来的な需要のさらなる増加も期待されます。課題としては現状では製造が難しく、コストが高いことから本格的な市場拡大は当面先と見られます。しかし、コロナがもたらしたデジタルシフトによりVRやAR、ウェアラブルデバイスなどの需要は今後も衰えないとみられており、マイクロLEDディスプレーの技術開発などのニュースが注目される場面があると思われます。

マイクロLEDディスプレー関連はソニーグループ、シャープ、アルバック

出所:株式会社QUICK作成

ソニーグループ(6758)は、プレイステーション(PS)などのゲーム、音楽、映画などのコンテンツが収益をけん引しています。一方でかつては赤字続きだったテレビ事業は構造改革を進め、販売台数を無理に追わず収益性を重視する経営戦略が実り採算が改善しています。7月には世界初となる最新の業務用の超大型マイクロLEDディスプレーの「Crystal LED」を発表し話題となりました。高コントラスト、高精細な表示による圧倒的なリアリティーで、没入感と臨場感あふれる映像表現を売りとしています。

株価は年初来ではTOPIXの上昇率を下回っていますが、業績拡大への期待から着実に下値を切り上げる展開となっています。

シャープ(6753)は、液晶や有機ELのディスプレー先端技術への研究開発投資を続けています。17年には米国でマイクロLEDディスプレーの製造効率化に関する研究開発を手掛けるeLux社と合弁で関連事業を立ち上げています。2020年12月に開催されたディスプレー技術の国際会議International Display Workshop 2020ではマイクロLEDディスプレー開発成果の論文が2019年に続いてBest Paper Awardを受賞しました。

株価は年初来の水準を下回っていますが超高精細の8K映像システムを核に据えた経済圏「8Kエコシステム」構想の実現度合いに応じて見直しの余地がありそうです。

アルバック(6728)は真空技術を活用したディスプレーや半導体の製造装置、部品メーカーです。化合物半導体のSiC(炭化シリコン)向け製造装置で高いシェアを持っているほか、GaNの低消費電力化の開発にも注力しています。ディスプレー製造装置は有機ELの本格化が追い風となって受注が増加しており、マイクロLEDディスプレーの成膜・加工装置の開発も進展しています。

株価は高値圏での物色が続いています。半導体のロジック・メモリー投資や中国の国産化方針に基づくエレクトロニクス関連投資、フラットパネルディスプレー関連投資などの拡大が好感されています。