教育事業に関する規制が原因

7月の中国株ですが、終盤に急落となりました。6月30日終値から7月30日終値までの騰落率は、上海総合指数が-5.4%、香港ハンセン指数が-9.9%となっています。上海総合指数も香港ハンセン指数も7月26日から激しく急落しました。

株価が急落した原因は中国政府が教育事業に関する規制を強めてきたことです。

中国当局はその前からテンセント(00700)やアリババ(09988)、美団(03690)などのIT大手企業に厳しい罰則を与え、中国の配車サービス大手、滴滴(DIDI)が米国IPOを強行したことに対しても厳しい罰則を加えていました。

滴滴(DIDI)については違法に個人情報を収集しているとされ、運営する25のアプリの削除が要求された他、7月16日からはオフィスに立ち入りサイバーセキュリティ調査が実施されています。

なぜ滴滴(DIDI)がそこまで厳しい指摘を受けているかというと、同社は中国の限られた機関しか認められていない高精密地図を作成する認可を得ている他、3億7,700万人の年間アクティブユーザーや1,300万人の年間アクティブ運転手の個人情報や交通量データなどを保有しているからです。万が一、これが海外に流出すると国家安全保障上の問題になるとみられているのです。

そして7月24日に今度は、中国の教育企業への厳しい規制が発表されました。具体的には新規の開業を認可しないことや既存事業に関しては非営利化していく方針を示したのです。

表向きは少子化の原因の1つが教育費の高騰で、しかも、裕福な家庭の子息が高額の学習サービスを受けることによって高学歴高収入となり、貧しい家庭との更なる格差を招くとも指摘。そのため、公立学校の教育内容を高め、機会の均等化を図るとしています。

確かにこうすることによって、中国共産党は多くの民衆から支持を得られると思いますが、収益の悪化を強いられる教育企業の株価は大きく下落しました。また、民間企業への引き締めが、その他の業界にも拡大するのではないかとの懸念から7月26日以降、中国株は下落したのです。

8月に入って回復も、本格回復には時間がかかる

しかしその後、中国証券監督管理委員会(CSRC)が主要投資銀行の幹部に、その他の業界に対して引き締めの意図はないと説明したことや、中国証券当局のトップが国際金融企業に対し、今後、新たな政策を実施する際は市場への影響を考慮すると非公式に伝えるなど、当局側は火消し作業に入っています。その影響もあって、7月末から8月にかけて株価は若干回復しています。

ただ、投資家は疑心暗鬼な様子です。というのも教育やIT大手への規制強化は長期的なテーマと見られるため、今後もどのような政策が出てくるか分からないと見られるためです。したがって、株価が本格回復基調に入っていくためにはまだ時間がかかるのではないかと考えています。

その一方で、中国の経済指標は比較的堅調です。いくつかあげますと、6月の輸出は前年比32.2%増となり、市場予想の23.0%増や前月実績の27.8%増を上回りました。また、6月の小売売上高は前年比12.1%増となり、前月の12.4%増よりは小幅な伸びとなったものの市場予想の10.8%増は上回っています。その他、鉱工業生産も8.3%増と前月の8.8%増よりは小幅な伸びとなりましたが、市場予想の7.9%増を上回りました。

このように足元の経済状況は悪くはないのですが、ここに来て新たな問題が発生しています。新型コロナウイルスの変異株の感染拡大です。

8月2日には感染拡大がここ数ヶ月で最大規模となっていることを受けて、数百万人を対象に外出制限が課せられた他、大規模検査や移動制限も実施されています。今後も感染拡大が続きロックダウン(都市封鎖)などが発生すれば中国経済に大きな影響を与えそうで、もちろんそうなれば中国株にも打撃を与えそうです。

もっとも、中長期の展望は良好なままで良いと思いますので、大きく下がったところは優良銘柄の良い買いタイミングになるのではないかと思われます。