これまでの連載はこちら> http://lounge.monex.co.jp/column/money/
身近なお金をテーマに書いていますが、今朝も新聞で気になる記事がありました。個人年金が「変額」から「定額」にシフトしている、というもの。
個人年金は生命保険の一種ですが、そもそもの生命保険は主に3つに分類されます。
1.死亡リスクの備える(死亡の場合、保険金を受け取る)死亡保険
2.生存していることで保険金を受け取る生存保険
3.双方を組み合わせた生死混合保険
なお、最近多い病気のリスクに備える医療保険は第3分野の保険といわれます。
個人年金は上記でいうと、長生きのリスクに備えるための商品、すなわち生存保険となります。
その個人年金、定額と変額のそれぞれの違いは下記になります。
・定額年金・・・契約時に将来受け取る年金額が決まっている。積立金は確定利 回りで運用される。
・変額年金・・・契約時に払った保険料を加入者自身で運用し、その運用実績に 応じて将来の年金額が変動する。
記事は昨夏以降の株価低迷や景気減速からくる将来不安から、より安全性が高い確定利回りの定額年金を選ぶ人が増えている、という主旨でした。記事の中では定期預金残高も前年比で増えていることを指摘しています。
でも本当にそれが「安全」で「安心」な選択でしょうか?
株価が低迷し、経済が不安定なとき、安全を好むのは当然のことです。プロでも投資資金を株式から債券に移動させます。でも景気動向が変われば、また株式市場に資金を戻しますし、債券投資そのものにも様々な手法があります。 個人向けにも様々なタイプの債券が販売されている現在、債券投資でも利回りアップを目指したり、株式→債券→株式という投資法を実践することも可能です。
年金商品は、長期に資金が固定され(流動性は低い)、定額年金ではその長期間の間の利率を契約時に固定してしまいますので、機動的な投資の一環とは言えませんよね。その分安心を買っている、という声が聞こえそうですが・・・?
日本の金利はいまだ世界最低水準にあり、かつなかなか利上げできないにもかかわらず、インフレは徐々に進行中。
固定金利の預貯金はインフレにはとても弱い金融商品です。年金という種類の異なる金融商品であっても、固定金利商品という意味では預貯金と同じ効果で、しかも期間はずっと長期になり、なおかつ、年金手数料を顧客が負担しなければいけない点は、預貯金よりコストのかかる金融商品です。(税制面での控除や相続時の評価などは預貯金より有利です。)
将来インフレが進み、確定利回りの利率を越えてしまった場合、将来手にする年金では今手に入る生活用品を買うことができなくなってしまう可能性もあります。
長期固定商品を選ぶ際は、金利が充分に高いと判断したときがベストです。価格変動商品は、動きは不安定になることはありますが、インフレには比較的強いものです。
もちろん商品選びは、景気変動のサイクルと契約時の年齢、その他の保有資産との兼ね合いはありますが、こうした特性を理解した上で、金融商品を選択し、資産全体の投資利回りをアップできるようにしたいですね。
次回は101回目です。今後ともよろしくお願いします!
廣澤 知子
マネックス証券 マーケティング部 マネジャー
シニア・フィナンシャル・アドバイザー