保険を主軸に、銀行や証券、デジタル医療などを展開
今回は、平安保険(02318)を紹介したいと思います。
平安保険(02318)は生命保険や損害保険を手がける中国では最大の時価総額を誇る保険会社で、主力の保険に加え、銀行、証券、資産運用、そのほか子会社・出資先を通じてデジタル医療(平安健康医療科技(01833))や自動車情報サイト(汽車之家(02518))なども運営する金融コングロマリット企業です。
平安保険は20年近く注目し続けてきた銘柄で、いまや注目しはじめた当初とは比べ物にならないくらい巨大な企業となりました(総資産165兆円、時価総額20兆円クラスに)。
その間の成長スピードは加速する時期と、減速した時期が交互に巡って来て今日に至っております。ちなみに2020末の株価と2020年実績利益で計算したPERは約10倍でした。現株価と今期予想利益で計算したPERは約7倍となっています。
株価が調整している理由は中国株全体の調整もありますが、同社の成長が鈍化していることもあります。2021年1-3月期の業績は経常収益が3%増の3,668億元、調整後の純利益が9%増の391億元となっています。その中身を見ると、保険料収入は2%減と引き続き弱含みという状況ですが、金利収入、投資収入の増加が寄与して売上高に相当する経常収益は+3%の増収となりました。
また強みを持つリテール顧客の数は1%増加して2億2,000万人となりました。うち8,457万人が同社傘下の子会社を含めて複数の契約を持っています。一方、生命保険事業で重視される新契約価値(VNB)は+15%増の189.8億元となりました。このVNBマージンが新保険商品投入の影響で低下傾向にあり、伸び率も幾分物足りないものでした。保険外務員数は4%減少しています。生命保険事業の調整後の利益は+4%増に留まりました。
調整後の四半期純利益は過去2番目の高水準
損害保険事業は堅調で、保険料に対する費用の割合を表す「コンバインドレシオ」は1.3ポイント低下して95.2%となりました。この数値は低くなるほど事業効率が良いとされるものです。損害保険事業の調整後利益も+15%伸びています。
「平安好車主」アプリには1億3,300万人が登録し、中国で大手の自動車サービスアプリとなっています。傘下の平安銀行業務は利鞘改善し、金利収入を中心に収益が+10%増、調整後の純利益も+19%と大きく伸びました。不良債権比率も低下し、十分な引当金を積むなど、資産の質も改善しています。テクノロジー部門には香港に上場する傘下のオンライン医療・平安健康医療科技や自動車情報サイト・汽車之家の他、ニューヨークに上場する個人向け、機関投資家向けの金融サービス子会社がそれぞれあります。
さて、同社全体の調整前の純利益は+4%増の272億元となっていますが、上海に上場する不動産インフラ開発の華夏幸福基業(600340)に10.58%出資する第2位の株主となっています。しかし、この会社の財務状況が悪く、大幅な減損損失を計上しました。この影響で純利益は▲100億元も押し下げられました。このような特殊な損益を排除した調整後の純利益は9%増の391億元となっています。2019年第2四半期(2Q)の過去最高に次いで2番目に多い利益額です。
平安保険の通期ベースのROE推移を見ると、2014年~2016年まで16%~17%台で推移していましたが、2017年に20%を超え、この年に大きく株価が上昇しました。生保業界全体に保険料収入の回復ペースが鈍化しており、足元の業績と株価に勢いはありません。
また、世界的な金余りからの債券の値動き投資による債券価格上昇に起因した長期金利の低下も金融業界全体にとってマイナスとなっております。しかし、個人的には長期的な視点で注目しておきたい銘柄の1つだと思います。
また、損害保険事業は堅調であり、金融やテクノロジー事業などは伸びているため、様々な業種を擁するコングロマリットとしての先の見通しはそう悪くないと考えています。