オンラインゲームを主軸に事業拡大

今回は2021年1-3月決算で業績が良かった銘柄の1つである網易(09999)をご紹介したいと思います。中国第2位のオンラインゲーム企業で、米国のナスダック市場に上場していたのですが、2020年6月に香港へセカンダリー上場を果たしました。あまり派手さはないものの、長年に渡り着実に業績と株価を大きく伸ばしてきた銘柄です。

一時多角化を進める中で利益を圧迫した時期を除いて、業績は至って堅調に推移してきました。毎月発表されるスマホアプリのパブリッシャー別の売上ランキングにおいて、1位テンセント、2位網易(ネットイース)というのが長年の指定席となっています。その後にアリババ集団、バイトダンス(Tik Tokを運営)、百度などが順位を入れ替えながら続くという感じです。

5月26日に同社は音楽配信の「網易雲音楽(ネットイース・クラウド・ミュージック)」を手掛ける子会社「クラウドビレッジ」を分社化し、香港証券取引所へ新規上場申請しました。こちらは月間の利用者数が1.8億人となるサービスを運営する会社です。

この子会社のネットイースの持ち分は現在62.46%となり、スピンオフ上場後も連結対象として子会社に残る予定ですが、一部の株式を売り出して資金調達します。高値が付けばネットイースの資産評価も高まります。

ネットイースは自社開発のPC及びスマホゲームを中国および日本など海外に配信する他、米ブリザード・エンターテインメント社やモージャンAB社(マイクロソフト傘下)など海外大手ゲームのデベロッパーとも提携し、ライセンス販売を行っています。また、「マーベル」「ポケットモンスター」「ハリー・ポッター」などの知的財産キャラクターを他社との提携によって使用しています。

ゲーム以外の事業は、クラウド音楽配信の「網易雲音楽」、オンライン教育の「有道(子会社として米ニューヨーク証券取引所に上場)」、国内ECサイトの「網易厳選」を運営しています。また、そのほか、インターネットポータル運営やeメールサービス、モバイルアプリの「網易ニュース」、ライブストリーミングの「CC」など、各種メディア事業を通じて広告収入を得ています。

堅実な成長が見込める銘柄

2021年1-3月期の業績は売上が前年同期比20%増の205億元、純利益が25%増の44億元となっています。2019年末から着実な売上増が四半期ごとに見られます。

売上の7割以上を占めるゲーム部門の伸びはしばらく止まっていたのですが、当四半期は久しぶりに大きく伸びました。主力タイトルゲームが2桁台の堅調な伸びとなったことに加え、当四半期に投入した新作ゲームがかなりの好調で、ゲーム部門は+11%の増収でした。なかでも73%を占めるモバイルゲームは+15%増と力強いものでした。

主力のゲーム部門の利益が伸び、オンライン教育からの費用圧迫も軽減され、営業利益は前年同期比で▲5%減だったものの、10-12月期からは+42%も増加しました。オンライン教育の受講料は前払いで、一旦負債に計上され、授業の消化が進むごとに負債を取り崩して売上に転換されていきます。

一方、生徒獲得に過大なプロモーション費をかけており、費用は先に全額計上されます。このためこれまでは費用が先行して利益を圧迫してきましたが、徐々に売上計上が進むと共に、費用も低下してきました。

決算は力強い内容でした。主力のゲームは新作が好調で、将来の売上となる前受収益も伸びています。会社は長期的にも自社の株価に割高感はなく、成長が続くと見ているようで、2020年2月に設定した10億米ドルの自社株買い枠を倍の20億米ドルとし、それも大方消化してしまったので、新たに20億米ドルの枠を2021年2月末に設定しました。2年以内に市場で買い付け、消化する予定です。

オンライン教育に続き、音楽配信の子会社も分離上場することで部門ごとの透明性が高まり、適切な評価をしていけることになります。ただ、大手ほど新規事業への投資を派手に行っているわけでなく、あくまでオンラインゲームが主体となる会社で、大きく化けるというよりは堅実な成長が見込める銘柄だと思います。