12月というとクリスマス。ツリーやイルミネーションが街中を彩り、慌しさの中にも華やいだ気分にさせてくれます。(地球温暖化防止、省エネのため、イルミネーションもLEDを使用するなど工夫されてきているとのこと。)まあ、日本の場合はクリスマスの翌日には飾りが全てお正月仕様となり、「もういくつ寝ると〜」と洋から和へとすっかり転換してしまうという余韻のなさも気になりますが・・・
クリスマス前にはクリスマス商戦、お正月前にはお正月商戦と、商魂は限りなくたくましいものです。(ちなみにお正月が明けるとすぐバレンタイン商戦が始まりますね。)
もちろん商魂がたくましいのは日本だけではありません。世界的にも注目される年末商戦があります。消費者の動向が景気指標として大きな意味を持つアメリカです。先週の木曜日、11月の第4木曜日の感謝祭(サンクスギビング)の翌日から大規模セールの年末商戦に突入します。多くの小売販売業者がこの日に売上が急増、赤字だった業者も黒字に転換することから「ブラックフライデー」と呼ばれるそうです。
金融業界にいると、「ブラック」と聞くと「ブラックマンデー」、古くは「ブラックサーズデー」のいずれも株価大暴落の「暗黒の月曜日」(1987年)や「暗黒の木曜日」(1929年の大恐慌)がイメージされ、良い印象はありません。でも「ブラックフライデー」のブラックは黒字の黒で、業者にとってはとてもハッピーなもの。色で命名することの多いアメリカですが、なんとも紛らわしいですよね。
さて、このブラックフライデーに始まる年末商戦はアメリカの消費動向のバロメーターとされています。サブプライム問題で揺れる今年。ニュースなどでは低所得者層はもちろん中流家庭においてもローンの返済に苦しんでいる様子が流れていましたし、ショッピングどころではない人が多いのでは・・・と思っていました。
ところが、です。実際テレビで見ていると、明け方のセール開始(セール開始時刻がほとんど夜中!というのも驚かされました!)に向けて延々と列を作り、買い物する気満々の人々が映っていました。セール開始と同時に我先にと中に駆け込み、信じられないような大量の買い物をしている人、人、人。けっして裕福な上流階級の人には見えない人々。庶民向けデパートでの映像です。
今年のブラックフライデーは好調なスタートで、オンラインショッピングの売り上げもブラックフライデーだけで、5億3100万ドル、前年比22%増(米com Score Networks調べ)ということです。
その他のブラックフライデー関連の調査結果はこちら(英語)
→ http://www.comscore.com/press/release.asp?press=1914
聞こえてくるサブプライム問題の深刻さと、活気あふれる買い物客であふれる映像。どちらも偽りはないのでしょうが、誇張された情報を一部見るだけでは景気や経済の判断は難しいものですね。
アメリカの株式市場に見える景気失速感、原油高などからくるインフレ懸念、このまま進むと景気は悪いのに物価高(=スタグフレーション)という1970年代以来の状況に陥らないとも限りません。
アメリカの経済状況はあっという間に世界中に波及します。立ち直りかけている日本経済(インフレの方が早足のようですが)にも打撃です。
年末商戦に見える活発な消費動向がプラスに働いてくれることを祈るばかりです。
廣澤 知子
株式会社マネックス・ユニバーシティ 取締役副社長
http://www.monexuniv.co.jp/
「廣澤知子のやさしいマネー講座」バックナンバー一覧はこちら
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/cat_37.html
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著書「金利をやさしく教えてくれる本」
http://www.monexuniv.co.jp/book/#kinri
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