今朝の新聞に「年金の離婚分割請求 半年で4000件超」という記事がありました。

ご存知の方も多いと思いますが、この4月より離婚による年金分割が可能となりました。「離婚した夫婦の公的年金が最大5割分割される」制度として施行前から注目されていた制度です。
4000件ときくとさすがに「多い」という印象を受けますが、記事によると昨年10月からの相談(来訪)数は4万6000件を超えていますから、それに比較すると実際の請求件数は10%にも満たないことになります。
「最大5割の分割」という表現が一人歩きし、誤解をされているケースも多いことにも理由があるようです。

まず、分割される年金は「公的年金」の中の「厚生年金」であること。
つまり対象者は第2号被保険者(サラリーマン等)となります。
自営業者等第1号被保険者は今回のこの制度からは影響を受けません。

次に「最大5割」の誤解についてです。(ここでは多くのケースである第2号被保険者が「夫」、第3号被保険者が専業主婦である「妻」としてお話します。)分割対象は「婚姻期間」の「厚生年金のうち、報酬比例部分」の最大5割を話し合いの上分割、となっています。
(2007年制度施行後の現在は「話し合い」の上按分割合を決定(最大5割)しますが、2008年4月1日以降は、離婚をした場合に、当事者一方からの請求により、第2号被保険者の厚生年金の保険料納付記録を自動的に2分の1に分割することができます。)

一般的な例で、例えば月額17万円の老齢年金を受け取る予定の夫がいた場合、離婚後分割すれば「最大5割」で最大8万5000円を受け取れると勘違いされることがあります。
老後の公的年金は厚生年金加入者の場合、基礎年金+報酬比例部分(現役時代の給料、つまり支払った保険料に応じて決まる部分)で成り立っており、今回の分割対象は報酬比例部分となります。基礎年金の月額金額(平成19年度 保険料満額納付の場合)を6万6000円とすると残りの10万4000円が報酬比例部分です。ですが、必ずしもこの金額が全て分割対象になるとは限りません。
「婚姻期間」に相当する部分が対象となりますので、就職と同時に結婚したのでない限りその金額より少なくなります。
その上最大5割、ただし話し合いによってその割合は決まる、というものなので、上記例に基づけば妻の受け取り金額は多くても3〜4万円となる可能性が高いわけです。

もちろん第3号被保険者は自分自身の基礎年金があるため、離婚後の老後の公的年金総額が月額3〜4万円というわけではありません。
(基礎年金が満額あれば9万6000円〜10万6000円となります。)
ただ注意が必要なのは、分割分も含め、年金受給資格は加入年数25年以上となっていますので、第3号被保険者期間+それ以前、以後の第1号被保険者期間および第2号被保険者期間の合計が25年未満の場は基礎年金を含め、公的年金を受け取る資格はないことになります。
もちろん60歳前に離婚する場合は、国民の義務としてこれまで第3号被保険者には免除されている保険料納付義務が発生します。

以上のように、年金の離婚時分割請求ができるようになったとはいえ、対象者も金額も限定的かつ様々な制限があることを知って、制度ができたからと気が大きくなり過ぎないようにご注意くださいね。

それでも念のため、分割対象期間、按分割合の範囲など必要な情報を把握しておきたい方はこちらから請求できます。
http://www.sia.go.jp/topics/2006/n1003-1.pdf

詳しくは社会保険庁のHPへ
http://www.sia.go.jp/topics/2006/n1003.html