6月6日付けの金融専門紙「日経ヴェリタス」では、「みんなのアクティビズム」と題したアクティビズム・アクティビストの特集記事が掲載されていました。副題は、「ESG時代、「利己も利他も」変わる株主」とされており、本連載でも取り上げてきているように株主、アクティビストが変わってきていることを示す内容となっています。

株主総会で目立つ会社側提案議案の低賛成率

その記事の中で興味深かったのは、「5月までに開かれた総会で低賛成率だった主な議案」というものです。5月7日付けの記事でご紹介したように、株主総会は概ね決算期末の3ヶ月後に行われます。ですので、5月までに開かれた総会は概ね2月決算の企業の総会までで、国内で主流の3月決算企業は含まれていません。しかし、錚々たる企業の総会において、会社側提案の議案が低い賛成率にとどまっていることが分かります。

トップの選任を見ると、吉野家HD(9861)、GMOインターネット(9449)の社長の取締役選任議案の賛成率が70%台にとどまっています。社外取締役・社外監査役では住友ゴム工業(5110)、グリコ(2206)などの候補が70%台です。買収防衛策の導入では50%台の賛成となった企業もあります。以下の記事では個人投資家の議決権行使について、取締役選任議案・買収防衛策の導入に絞ってよく検討することをお勧めしました。

●個人投資家は株主総会に影響を与えられる?(2021年5月18日)

●企業価値を高める!個人投資家の議決権行使の方法・考え方とは?(2021月5月21日)

上記の記事でもご説明したように、個人投資家の議決権保有比率は概ね20%程度です。議決権行使は100%行われるわけではありません。

例えば、全体の議決権の70%が行使されるとします。上記のように賛成率が70%程度の総会の場合、全体の70%の70%、つまり全体の49%が賛成で、全体の70%の30%、つまり、全体の21%が反対ということになります。個人投資家の議決権保有比率は全体の20%ですので、49対21であれば、14%が賛成から反対に回ることで否決になることもあるのです。賛成率が70%の企業では経営陣にプレッシャーもあるはずですので、個人投資家が声をあげることは企業の規律にとって、非常に大事だと思います。

「会社四季報」夏号、注目すべきポイントは?

さて、6月18日は四半期に1度の会社四季報の発行日です。オンライン証券各社では当日から新紙面をオンライン上で確認できます。マネックス証券でも本日早朝から新しい四季報が提供されています。

6月の会社四季報(2021年3集 夏号)は特に注目に値するものです。国内の多くの企業は3月決算ですので、決算発表は概ね4月下旬から5月にかけて行われます。その決算は本決算のため、今年(2021年)でいうと、2020年度の1年の決算と2021年度の予想を開示します。四季報では決算情報は独自の予想を記載し、コメント欄でその予想を補足します。6月の四季報は多くの企業の本決算と来期予想が開示された後の情報が反映されているため、特に注目されるのです。

これまでの本連載で取り上げてきた企業について、四季報がどのように取り上げているかを見てみましょう。

まずは東芝(6502)です。東芝については四季報の業績予想は会社予想と同じです。一方、企業が公開しなかった配当予想について四季報は80円から100円と、前期の80円から増配する含みをもたせた予想を行っています。ちなみに東芝は前々期が20円配当で、前期の80円も大きく増配しています。四季報では「増配濃厚」とし、社長交代を取り上げた上で、買収観測が残り、余剰自己資本で自己株買いなど追加還元方針としています。直近の経営陣の交代により、株主還元が強化されるという見方のようです。このような会社予想と四季報予想が異なっているものは注目ができます。

次に過去にアクティビストが投資している銘柄として取り上げた企業を見ていきましょう。

●「物言う株主」(アクティビスト)は、どの企業に投資している?(2021年1月22日)

上記の記事ではアクティビストである「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」と「シティインデックスイレブンス」の投資先を取り上げています。エフィッシモが10%以上の株式を握る第一生命HD(8750)は会社予想自体が62円から77円の増配ですので、四季報予想も同様です。そのうえで、総還元性向50%と株主還元についてコメントしています。シティインデックスイレブンスが投資する三信電気(8150)、大豊建設(1822)ではいずれも自己株取得についてコメントされており、同じく株主還元の動きを取り上げています。

会社四季報のコメント欄はその企業の大きなトピックを取り上げます。例えば、新ビジネスや注力商品などです。これらのアクティビストが投資している銘柄で株主還元など、株主との関係が重要なトピックになっていることを示していると言えるでしょう。四季報の記事は記者が企業に取材するなどして書いているもので、基本的には経営者が直接口にしたことがベースになっていると思われます。その意味で企業の方向性をつかめるものになります。こういう方向性もぜひ重視したいところです。

有名な銘柄ですと、どのようなコメントがあるでしょうか。任天堂(7974)について、四季報は巣ごもり特需が一服し、Switchの人気は続き、営業益は落ちるが会社計画は慎重としています。会社計画では1.6兆円、営業利益を5000億円としているところ、四季報予想では売上高1.7兆円、営業利益5800億円としており、配当も会社予想の1,430円に対し、1,600円としています。

「ウマ娘」が好調のサイバーエージェント(4751)は会社予想のレンジを真ん中にしており、「ウマ娘」については反動減としています。これらのコメントがサプライズになることもあります。一方、四季報が書くということは早期にそれらはコンセンサスになるとも考えられます。自分自身で分析してコンセンサスと違う目線がある場合はそこに投資機会が眠っている可能性があります。特にアナリストレポートのない中小型銘柄の場合は四季報のコメントや予想の重要度が高そうです。

他にも四季報では様々な企業についての直近の話題や重要トピックが確認できます。ぜひ、この週末は保有銘柄や注目している銘柄を四季報で確認してみてください。