みなさん、こんにちは。振り返ってみると、5月はセルインメイ(Sell in May、株は5月に売れ)の相場格言通りの展開となりました。

ただし、ワクチン手当の進捗などを背景に当面の悪材料はかなり出尽くしてきた印象もあります。決算発表でも製造業を中心に強気見通しが相次ぎました。各社ともウィズコロナの時代に対応した施策を着実に打ってきた成果が出てきているのでしょう。もちろん、現時点でも厳しい状況を余儀なくされている産業は少なくありませんが、状況は着実に進展しているのだと私は感じています。

相場格言では、セルインメイの後に、カムバックインセプテンバー(Come Back in September、9月に戻れ)と続くのですが、まもなくオリンピック・パラリンピックの動向もはっきりし、9月までには解散総選挙も予定されています。とすれば、私はもう少し早くに戻っても良いのでは、と考えています。

情報収集の落とし穴

さて、今回はちょっと趣向を変えて「投資情報」をテーマに採り上げてみたいと思います。2020年末以降、様々な雑誌やメディアで株式投資特集が組まれるようになりました。これらの投資情報をどう読めば良いのか、について今回は私なりの考えをお伝えしたいと思います。

もちろん、これは個人的意見であり、私の考えが全く正しいとする意図はありません。私自身の投資遍歴においても、何度か相場を読み間違えて手痛い失敗もしています。絶対正しい考え方などはなく、また状況によって機能するセオリーもどんどん変わっていくのが現実であり、常勝などはまず無理だからです。

そのような中、氾濫する情報をどのように見るべきかに関して、私なりの考えを1つの参考として捉えていただければ幸いです。

まず、株式投資情報が数多組まれ始めているのは、往々にして「既に株価は上昇している」ということを認識しておく必要があります。既に上昇しているからこそ、「上昇相場というバスに乗り遅れるな」というトーンの記事を構成することができ、それが読者や視聴者の関心を惹くという構造にあるのです。

メディアは当然、読み手・聞き手の注目を集めることで成立する事業構造にある以上、こういった「(ある意味)煽り」は至極当たり前のアプローチにあると言えるでしょう。実際、私に「改めて投資指南書を書きませんか」というお声がけを出版社からいただくケースが増えるのも、このような株価上昇があった後になります。

ちょっと厳しい言い方をしてしまえば、こういった株式投資情報が乱立してくる局面というのは、ボトムから反発してくる「一番変化率の高いステージ」が終わった後、となりがちなのです。

時間軸の捉え方が大事

相場心得をテーマとする際にも触れたいと思いますが、株式市場には「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」という有名な言葉があります(これは私がまさに座右の銘としている相場心得です)。

より投機的な色彩の濃い暗号資産相場などはまさにこの格言通りの動きになっていますので、納得される方も多いのではないでしょうか。たくさんの投資情報が乱立し、そこに「乗り遅れるな」というトーンで語られている局面は、ここでいう「楽観の中で成熟する」フェーズと位置付けられるかもしれません。

少なくとも上昇相場の序盤ではない以上、「どんな銘柄でも買っておいて放置しておけばリターンが期待できる」という成果は期待しないほうが良いでしょう。氾濫する投資情報に対しては、そういった認識で臨むべきと考えます。

すると、相場が成熟する過程で如何に投資に臨むか、が重要なポイントになってきます。どういった銘柄を選択するかは投資家個々人の好みによると思いますので、ここでは実際に銘柄選択をする際にどういった投資情報を参考にすべきかについて言及してみます(あくまで参考であり、判断はご自身で行うようにしてください)。

端的に言えば、どういった投資情報が参考に足るのか、ということです。もちろん、そうでない投資情報は参考にならないと断じることはしませんが、私はそこにあまり説得力を感じないのだということとご理解ください。

私が巷に溢れる投資情報で必ず確認するのは、時間軸が提示されているかどうか、です。実際、多くの投資情報には時間軸が提示されていません。上昇期待が大きいとはありますが、それがどのくらいの時間を要するものなのかどうかは触れられていないのです。

これは少しずるい記述と言えるかもしれません。時間軸がなければ、いつかは「投資情報記載の予想はしっかり当たった」と言うことも可能なうえ、少々無責任なコメントでも言い逃れができてしまうからです。カリスマ投資専門家が誇る高い予想的中率も、実は予想時からの時間軸を無視してカウントし、いいとこ取りの結果論となっているケースが少なくありません。

しかし、投資に時間という概念を外して考えることはできません。これは投資の基本中の基本です。時間軸をきちんと踏まえている投資情報ならば参考に足りると考えるのはそのためです。

こういった観点で数多の投資情報をご覧になっていただくと、如何に時間軸への言及が少ないかを感じられることでしょう。相場展開の「成熟フェーズ」入りが明確になればなるほど、銘柄選択と同時に時間軸の捉え方も重要になってきます。

氾濫する投資情報を鵜呑みにすることはせず、そういったフィルターを通して読み込むことが非常に重要です。こういった見方が投資家諸兄の参考になれば幸いです。