◆「あるトレーダーが、月曜日に株が上がるというパターンを発見した。ところがそんな単純なパターンは誰でも気づく。それを利用して儲けてやろうと金曜日に買って月曜日に売る人たちの取引で、パターンはならされて消えてしまう。」これはナシーム・ニコラス・タレブが著書『まぐれ』の中で、経済学者のロバート・ルーカスの考えを分かりやすく紹介した例えである。人々が合理的なら、過去のデータを使って予測可能なパターンを見つけ、それに適応するから、過去の情報は将来の予測にまったく使えなくなる。これがルーカスの主張である。
◆今日は月末最終日だ。月末の日経平均は昨年9月から8カ月連続で下落している。「月末株安のアノマリー」だ。ところが先週末の日経平均は600円高と大幅に上昇し、2万9000円の大台を回復した。これをどう解釈したらよいだろう。月末に株は下げるということがわかっているなら、先週末にあれほどの上げ相場にはなっていないはずだ。シンプルな答えは、「月末株安のアノマリー」など無視する向きが大勢を占めたということだろう。
◆お客様からの質問に答える「マーケットの羅針盤」で、テクニカル分析を否定したことが波紋を広げている。しかし、改めて言うがテクニカルでは儲けることはできない。アカデミックには市場効率仮説のウィーク・フォームは成り立つというのはコンセンサスになっている。実際問題として過去のチャート・パターンで売買しても、うまくいく場合もそうでない場合もある。つまり、それは「使えない」ということである。
◆某ストラテジストは「今週のマーケット展望」でこんなことを述べている。「日経平均の一目均衡表の雲は31日に<ねじれ>を迎える。雲の<ねじれ>は相場の転換点になる。」転換点の意味はどっちなのだろう。前回はその雲のねじれの隙間から下方に急落した。今度はその間隙を縫って上に抜けるか?それともここまで連騰で戻してきた上昇基調が転換するのか。どちらにも可能性がある…だから、テクニカルはだめなんだってば!
編集注:「新潮流」は「メールマガジン新潮流」の中で、「今週のマーケット展望」に続いて配信されています。