景気拡大が戦後最大の「いざなぎ景気」を超えることが確実に、というニュースが注目されています。戦後最大の景気拡大期を超えた・・・?と実感がわかない方が多いのではないでしょうか?
一体どこが景気拡大なのかというと、実のところ「上向いている」という実感の伴うものではなく「景気回復」、つまりヒドイ状況から正常化している段階という捉え方です。そう言われてみれば危機感は薄れてきたような・・・。でもそれは企業、特に大企業の話。

個人の景況感はというと、日銀のアンケート(「生活意識に関するアンケート」(9月調査))によれば、残念ながら悪化しているようです。景気拡大の恩恵を受ける前に物価上昇懸念から「暮らし向きは悪くなってきた」という数値が上がってきたのです。(「ゆとりが出てきた」―「苦しくなってきた」で求めます。前回はマイナス37.1。今回はマイナス39.6。)
これは1年後に物価が上昇すると見込んでいる人々は増加しているというアンケート結果も裏づけになります。人々のインフレ期待が高まるということは、実質的にもデフレからインフレへの転換が近づいていること。でもいまだはっきりとは「デフレ脱却宣言」もされていないままなのです。

景気拡大(回復)、物価上昇懸念 ⇔ 景況感悪化、まだデフレ脱却宣言が出ない。

逆の状況が同時に見受けられているのが今の日本なのですね。なんともスッキリとしない状態です。
それだけに日銀もかなり慎重です。年内の追加利上げの可能性も福井日銀総裁は否定してはいませんが、順当に金利上昇していくというのは考えにくい状況です。ゼロ金利政策が解除されて以来、金利上昇することにかなり注目が集まりました。「急がなければ金利が上がる!」とばかりに人々を煽る広告も見られました。でも実際のところは実生活に影響の出るような金利の上がり方はまだほとんどない、というのが事実です。

でもすでに物価上昇懸念は出始めていますし、景気拡大期に金利が上昇するのは、経済学的にいえば正しいのです。
どんな時代でも、どこの国でも景気は循環しているもので、ずっと景気が良いことも、ずっと景気が悪いこともありえません。今の日本が景気回復ではなく景気拡大である、という人々の実感の伴うものになってくれば必ず緩やかでも金利は上昇(というより、通常の金利のある世界に戻ってくる)してくるでしょう。
今変化がないから、気にしなくてもよいというものではありません。焦る必要はありませんが、実際の動きが出てくる前に身の回りの変化に備えてぜひとも対策を考えておくようにしたいですね。