誰でも簡単にハッカーになれる時代
サイバー攻撃用のソフトウェアをサブスクリプション(定額課金)などで簡易に提供する闇ビジネスが広がり始めた。クラウド経由で誰でも簡単にハッカーになれる時代である。
バイデン米大統領は5月12日、米国のサイバーセキュリティ対策の強化を目指す大統領令に署名した。先日、石油パイプラインを運営する米コロニアル・パイプラインがランサムウェア攻撃を受け、操業停止に追い込まれる事案が発生した。このように米連邦政府や民間企業に対するサイバー攻撃が相次いでいることを受けた措置である。
ランサムウェアとは、「Ransom(身代金)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせて作られた言葉で、今回はロシアを拠点とするハッカー集団「ダークサイド」が攻撃に関与したと見られている。
米国政府は「コロニアル・パイプラインのインシデントで、連邦政府の取り組みだけでは不十分なことが思い起こされた」とし、民間企業に対し、「将来起きるインシデントを最小限にとどめることを目的として、連邦政府と歩調を合わせ、意欲的な措置を取って、サイバーセキュリティに対する投資を拡大、調整する」と呼びかけた。
ランサムウェア攻撃による被害額が拡大
ランサムウェアによる身代金の要求額はここ数年で急騰しており、攻撃者にとってランサムウェア攻撃は手っ取り早く大金を稼げる手段となっている。このため、今後も攻撃の増加が懸念されている。
米国のセキュリティベンダーであるパロアルト・ネットワークス(PANW)が2021年3月に公開したランサムウェアの脅威を分析した「2021 Unit 42 ランサムウェア脅威レポート」によると、2020年に被害に遭った側が支払った身代金の平均額は31万2493ドルと、2019年の11万5123ドルから約2.7倍に増加した。さらに、支払った最高金額は、2019年が500万ドルだったのに対し、2020年には1000万ドルと2倍に膨らんだと言う。
注目のサイバーセキュリティ関連銘柄
改めてサイバーセキュリティの重要性が高まっている。そこで今回はサイバーセキュリティ関連銘柄を取り上げたい。今回はイントロダクション的に、どのような関連企業があるのか、米国市場に上場するサイバーセキュリティETFの組み入れ銘柄から探っていく。
以下は、米国市場に上場する6つの代表的なサイバーセキュリティETFの組み入れ銘柄上位10社をまとめたものである。
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6つのETF全てに組み入れられているプルーフポイント(PFPT)とフォーティネット(FTNT)、そして5つに組み入れられている前出のパロアルト・ネットワークス(PANW)について個別に取り上げる。
プルーフポイント(PFPT)
プルーフポイントは、ネットスケープ社の元CTO(最高技術責任者)であったエリック・ハーン氏によって2002年に設立され、2012年4月にナスダックに上場した。本拠地はカリフォルニア州のサニーベール。コンピュータおよびインターネット用サイバーセキュリティ関連製品・サービスの開発と販売を手がけている。
売上高は右肩上がりで順調に拡大しており、前期に初めて年間の売上高が10億ドルを上回った。一方、投資負担の先行などもあり利益は出せていない。前期(2020年12月期)は1億6400万ドルの純損失だった。
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なお、4月26日にプライベートエクイティ企業Thoma Bravoによる買収を承諾し、株式を非公開化すると発表した。Thoma Bravoは、ソフトウェアおよびテクノロジーセクターに焦点を当てた大手プライベートエクイティで、これまでにも複数のテクノロジー企業を買収した実績を持っている。
プルーフポイントの評価額は約123億ドル(約1兆3000億円)で、1株当たり176ドルとなる。この発表を受けて株価は大幅に上昇した。買収は、規制当局やProofpointの株主の承認などを経て、2021年第3四半期に完了する見通しで、取引が完了すると、プルーフポイントは非公開会社となる。
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フォーティネット(FTNT)
フォーティネットは2000年に設立されたネットワーク・セキュリティ・ソリューションを提供する企業である。製品とサブスクリプション・サービスを通して、世界中の企業、サービスプロバイダー、政府機関にサイバー・セキュリティ・ソリューションを提供している。
従来のファイアウォール(オフィスなど特定の施設のITシステムを保護する物理的デバイス)の分野で依然として強固な基盤を築いている。一方で、より最近のITニーズに応えるために新たなサービスを自社で(いくつかの小型買収によって補いつつ)開発している。業績は順調で、同業他社がなかなか利益を出せていない中、増収増益を続けている。
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4月29日に発表された2021年の第1四半期の総収益は7億1030万ドル(前年同期比23.0%増)、純利益は1億720万ドル(前年同期比2.5%増)だった。株価は2020年11月を底に上昇しており、5月7日には最高値となる212ドルまで上昇した。
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パロアルト・ネットワークス(PANW)
カリフォルニア州サンタクララに本社を置くサイバーセキュリティ企業。2005年に設立され、2012年にニューヨーク証券取引所に上場した。高度なファイアウォールと、それらのファイアウォールを拡張してセキュリティの他の側面をカバーするクラウドベースの製品を含むプラットフォームを提供している。
2018年6月にはソフトバンク・グループの元副社長であったニケシュ・アローラ氏が会長兼CEOに就任した。
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パロアルト・ネットワークスの特徴として、機関投資家が8割を超える株式を保有していることが挙げられる。プロ好みの株式のようだ。機関投資家の保有比率が高い場合、株価は上昇する傾向が高いとも言われるが、機関投資家が正しいとは言い切れない。安易な便乗はお勧めしない。
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石原順の注目5銘柄
上記の3社に次いで多く組み入れられていた5社はクラウドストライク・ホールディングス(CRWD)、シスコシステムズ(CSCO)、ジースケイラー(ZS)、アカマイ・テクノロジーズ(AKAM)、オクタ(OKTA)である。
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