先週、人気のフリーペーパー「R25」に「ポストBRICs」探しとして今後投資や企業の進出先として期待できる国々についての記事が載っていました。 
BRICsはご存知の方も多いと思いますが、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の頭文字をつなげたものです。一説には小さなSは南アフリカ(South Africa)とも言われています。
たしかにこれらの新興国は今や投資先として大人気で、投資信託が設定されるとすごい勢いでお金が集まり、あっという間に残高が膨れ上がるという状態が続いています。今年、一時調整基調にありましたが、最近は再び元気を取り戻している様子。
日本では景気回復が見えてきた、いざなぎ景気を(期間で)超えたといっても、ぐいぐいと成長しているという実感が伴うものではないですよね。
いざなぎ景気に乗って急成長したかつての日本の町工場が今や世界を代表する企業になったような、元気いっぱいで、これから大いに成長を期待できる会社があるとすれば30年、40年前の日本に似通って見える急成長中の新興国に自然と目が向いてしまう、ということでしょう。

確かに少子高齢化問題を抱え、成熟しきってしまった先進国より新興国の方が期待できると思います。
でも、ぜひぜひ注意してください。こうした新興国人気が過熱すればするほど、個人的にはとても不安定さを感じてしまいます。

実は私は以前、90年代のことですが、米系銀行でエマージング・マーケット、つまり新興国市場の為替の担当をしていたことがあります。当初担当を始めた頃に人気があったのが、メキシコでした。金利は高いけれど為替は比較的安定していました。アルゼンチンは当時南米の優等生で、ただ固定通貨制だった当時取引自体はそれほどありませんでした。そしてアジアの経済成長ぶりからフィリピン、インドネシア、タイなどもよく取引されていました。新興国の投信の設定やこうした国の外貨預金なども人気を集め始めていた頃です。
これらの国の名前を聞いて意外に思われる方もいるかもしれません。というのもこれらの国々は90年代半ば以降、大きな経済危機に見舞われて通貨が暴落しているのです。アルゼンチンは円建ての債券であるサムライ債を大量に発行していましたが、デフォルト(債務不履行)宣言をしてしまいました。
ところが最近、再びこれらの国々がメキメキと回復してきて注目を集め始めているのです。冒頭のポストBRICsとして名前が挙がっていたのが、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、南アフリカ、トルコ、バングラディッシュ、エジプトなどなどです。
あの、すさまじい危機を目の当たりにしている私は驚きとともに、どうしてもこうした新興国投資を全面的に支持できない部分もあるのです。

90年代後半に新興国に投資をしていたのは、主として企業でした。新興国の経済危機によって、個人でイタイ目にあったのは主に外貨預金をしていた人ですが、取り扱っていた金融機関も限定されていましたので、社会的に大騒ぎになるほどではありませんでした。

ところが今は投資信託などを通して大量の日本マネーが流れ込んでいます。市場自体が先進国と違って、まだまだ整備されず規模も小さく、法整備も先進国とは違って不備も多い、そうした市場では「何か」が起こったときにはすごい勢いでお金が引いていき、流動性がなくなり、つまり暴落が起こりやすいのです。しかも情報は先進国と違い十分にありません。個人投資家はどうしても遅れをとってしまうものです。まあ、投信であればプロが投資しているわけですが、それでも一気に流動性がなくなってしまうとプロでも太刀打ちできないものです。

こうしたリスクがあることをしっかりと認識することが、新興国市場に投資するときには一番大切なことだと思います。「人気がある」とか「話題だから」「期待できるから」などという理由で、手持ち資金を一つの国の投資へ丸ごとつぎ込むのはリスクが高過ぎるのです。

新興国市場に投資することは全く否定しませんし、私自身、期待できるエリアとしてポートフォリオの一部にしっかりと組み入れています。でもきっちりと分散投資しています!新興国は何かあると連動してしまうことは多いですが、それでも国の分散もぜひ行い、投資金額は資産全体の一部に留めるようにしたいですね。