先日新聞紙上にも掲載されていましたが、最近は大学生の投資クラブというものが活発に活動しているようです。私自身が大学生のときは「投資」なんて考える機会も縁もなく、隔世の感があります・・・
さて、先週の週末にそうした大学生の投資クラブ主催のイベントに招かれました。初心者向けの簡単セミナーを行い、その後でイベント参加者(大学1〜2年生が中心とのことでした。)による株式トレード・シミュレーション・ゲームとでもいうのでしょうか、(ソフトも大学生が組み立てていました。大したものです!)参加型のゲームがあり、コメンテーターとして参加しました。
私が外資系銀行に勤めていた頃、「ボース・ゲーム」という名前の為替ディーリング・シミュレーションのゲーム式トレーニングがありました。ちなみに「ボース(bourse)」というのはヨーロッパの証券取引所のことなので、「市場ゲーム」とでも訳せるのでしょうか。
社員のみならず、取引先のお客様も研修として社員を送り込み、1週間ホテルに泊まりこみでの研修でした。架空の通貨を架空のニュースにもとづき取引をし、本部は「中央銀行」として存在し、現実社会に模したさまざまな取引ルールの下で競いあうもので、そこの卒業生には現在ファンド・マネージャーとして活躍している方が数多くいます。そんな研修を思い出し、「ボース・ゲームの株式版ね」と思いつつの参加でした。
大学生は4−5人のチームに分かれ、用意された様々なニュースに「買い」「売り」「様子見」と判断しながら、ゲーム上の1年間が終了した時点(決算)で、手元の総資産額を競いあうというものでした。
作り手の投資クラブは証券分析にも詳しく、決算時には理論株価(一株あたりの利益×PER)に収束するようなイメージでゲームを組み立てていました。ところが作り手の思惑に反して、ニュースに反応するというよりは都度都度更新される株価に反応するという結果となり、結果として理論株価と実勢株価は大きく乖離していきました。
実は、これこそが実際の市場だということを最後にお話してきました。市場は決して理論どおりには動かないものです。参加者もプロばかりではなく、トレンドに右往左往する人のほうが多いのです。また、その企業の実力や実績とは全く別の要因(為替や金利、政治や突発的な事件など)によって株価は大きく変動します。
株式というものは上がるときもあれば、下がるときもあり、必ず儲かるなどということは決してないことも、大学生たちは体感したのではないでしょうか。最後に投資に興味を持った人は?と質問したところ、買った人も負けた人もほぼ全員が手を挙げました。皆、とても生き生きと目を輝かし、株式だけではなく投資全般に対して、とても前向きな興味を示していました。投資のことをもっと知ろう、学んでいこうという貪欲なほどの熱意を感じました。
きっと彼らのほとんどが個人投資家となって、市場に参加するようになっていくのでしょう。
こうして個人投資家の裾野が広がっていくことは、投資教育という仕事に携わっている者としては大変喜ばしいことですし、健全な市場形成のためにも良いことだと思います。
ぜひ大学生に限らず、(小・中・高校生も!)学生のうちから学校教育の中で、経済のこと、市場のこと、投資のことなど正しい知識を学べる機会が増えていってくれることを期待しています。