先週フランスの2006年出生率が2.00に上昇したというニュースがありました。日本の2006年の数字(合計特殊出生率)は1.29前後の見通しとのこと。(ちなみに2005年は過去最低の1.26)
出生率は女性が一生の間に産む子供の数の推計値で、単純に考えると人口の半分である女性が平均二人の子供を産まないと人口は減っていってしまいます。先進国は少子化に悩んでいるところが多いのですが、多産の移民の多いアメリカと前述のフランスは別格といったところでしょう。

■なぜ少子化が問題?
日本で必ず議論されるのが、年金問題です。
日本の公的年金は現役世代が納める保険料で高齢者を扶養するという「賦課方式」をとっています。これに対するのが現役時に保険料を積立て、高齢になったときに取り崩すものは「積立方式」と呼び、一般の民間の年金保険などはこちらにあたります。
賦課方式は世代と世代の助け合いといったものですが、現役世代の人数が減ってくればその分現役世代の負担は大きくなっていきます。

経済力の低下についても議論されます。
現役世代が減っていくことで、研究・開発力の低下や、消費の低下など経済規模が縮小。それによって税収減。個人の税負担の増加が考えられます。人口の減少により、オフィスや住宅の需要の低下につながり地価や不動産価格が不安定化することも懸念されています。

こうした議論を耳にするたびに、大変居心地悪い思いをする女性も多いのです。「自分たちの年金のために子供を産めというの?」
「育てるのは誰だと思っているの?」

■なぜフランスは出生率が2.00もある?
日本の議論の多くは、経済や社会保障の一面から見ていて、当の出産適齢女性(20〜40代)をとりまく状況を無視して進められているところもあるようです。対策として挙げられるものもフランスをお手本にした「政策」の輸入版が中心です。
フランスの出生率の高い要因として一般的に以下が言われます。
・ 手厚くきめ細やかな家族手当
・ 多種多様な保育サービス
・ 短い労働時間
・ 出産期女性の労働力率の高さ
・ 子供がいる家庭への優遇税制
・ 同棲による婚外子の一般化

日本も保育サービスなどいろいろと真似をしようと試みているようですが(遅々としてなかなか実現しませんが・・・)、日本のもつ事情ともっと向き合うことが大切なように思います。
まず、物理的な住宅事情。子供の数を増やして住めるだけの余裕はない、という家庭は多いようです。
教育・養育費の高さ。日本で子供一人の教育にかかるコストはざっくり見ても2000万円はかかるといわれます。もちろん公立、私立、最終学歴などによって大きく変わりますし、一度にかかるものではなく、誕生〜学校卒業までにかかるものなので負担は分散されますが。
現実社会に残る正社員と非正社員の格差。一般に、子育てのため、一度正社員を辞めてしまうと復帰が難しいのが日本の会社社会です。そして正社員と非正社員との間には待遇に大きな格差があるようです。フランスでは時短勤務の管理職も存在し、キャリアを中断することになりにくいのです。また職種や働き方などの選択は本人の希望によるとのことです。
労働時間の長さ。日本では全体的に長時間労働であるため、労働時間が短いことがハンディになりやすいですが、フランスでは男女とも比較的労働時間が短いです。

勤勉で心配性な日本人の国民気質からも、フランスと同じ「政策」を取り入れてもすぐに世の中が変わるとは思いにくいですね・・・もちろん長期的にはどんどん対策を施して食い止める努力が急務であることに違いありませんが。
■私たちにできることは・・・
一朝一夕で日本がフランスのようになることは期待できませんし、少子化が進行している事実と向き合いながら自分でできることを考えることが大切です。つまり政府が何か対策をしてくれて、少子化が改善されて、先に挙げたような問題が解決に向かうことを待っている余裕はないということです。
自分の将来に直接関わること、社会保障の負担増と税金負担増、受け取る年金の減少(開始時期の延長も?)などには自分で対応できるようにしていかなければならないということです。計画性をもって資産設計し、国に頼らないでもやっていけるような状況を作り出す必要があります。
早く始めるほど効果は高いものです。まだまだ先の話、と思わずにぜひ考えてみてください。