先日、市場関係者に(市場関係者ではなくても少しでも経済に興味のある人であれば)知らない人はいないという超大物S氏とお会いする機会がありました。彼は一時期為替市場関係者にとっては、まさに「市場を動かす人」として大変な注目をされていた人物です。
以前為替市場で仕事をしていた私にとっても、まるで「神様(!)」に会ったようなドキドキものの体験でした。

さて、タイトルの言葉は一般の個人投資家に向ける言葉として、その超大物から出た発言なのです。一瞬「えっ…?」と思いました。個人投資家に逆張りをススメる?

「逆張り」とは基本的には下がって行く動きの中で買い、上がってきたところを売るという投資姿勢のこと。(上がっていく動きの中で買うのは「順張り」です。) 下落していく途中で買うために、どこまで下落が続くか分からないというリスクが伴います。下手をすれば損を膨らませることになるため、市場を見ることに不慣れな素人であれば大きな失敗をする可能性も高くなります。
S氏は私たちの反応を見て、楽しそうにその言葉の意味をお話してくれました。
今や個人投資家が大分育ってきている。でも多くは金融機関の営業やメディアの発信する情報に踊らされていて、結局高値つかみをしてしまい、損することになってしまう。個人も世の中の流れをしっかり見て、2つのシナリオを持つべきである。

例えば今、投資した商品が順当に上昇している場合、

・ このまま上手く利益が膨らむシナリオ
・ 相場が反転して損するシナリオ

この二つのリスク・シナリオのどちらのウェイトが大きいのかを常に意識し、コントロールすべきである。相場というのはどんな相場であっても上がりっぱなしも下がりっぱなしもありえない。上がりすぎれば必ず反落するし、下がりすぎれば必ず反転するものである。こうした「循環」を意識することが大切である。金融機関がせっせと営業をしたり、メディアで話題にされる頃はちょうどピークに差し掛かっていることが多い。それらに振り回されている限りは「儲かる」投資家にはなれない。やたらと「買い」を薦められるようになったら、そろそろ「売り時」を見据えなければならない…だから「逆張り」だ、ということ。世の中のトレンドと逆の行為をするといっても、もちろん中身は吟味する必要がある。個人投資家は欲を持ちすぎず、もっと「損切り」と「利食い」のタイミングを意識することが重要である。   

たしかに「逆張り」は中長期タイプの投資に向いている手法と言われます。長期投資を志す人にとっては、短期ではリスクが大きく利益を上げにくい逆張りも、時間を味方につけることで成功につなげやすくなるということです。「逆張りのススメ」という刺激的な発言も、しごくもっともな、納得できる落とし所にまとめられました。

「しごくもっとも」でありながら、その語り口には新鮮さがあり、とても楽しく、さすが…と感じ入った次第です。

景気は常に循環している、各市場もそれに合わせて動き、それを理解することで投資に大きなプラスになる…といつも勉強会などで自分自身が話していることでもあります。

こんな超大物が根本は同じことを話されているんだ!と思うと同時に、これは投資の初心者が入り口で必ず知っておくべき、非常に重要なことであると再確認しました。

投資の技やテクニックを研究し、身に付けることも大切ではありますが、そのテクニックやツールを生かすためには基本(ファンダメンタルズ)をしっかり知っておく必要があるのです。
S氏はこうもおっしゃいました。

世の中が順当に動いているときは様々な技法が役に立つ。でも世の中の「構造」が大きく変わるときにはそれをちゃんと見抜く目を育てないといけない。過去の経験から編み出された技術は構造が変わるときには役に立たなくなるからだ。
ポイントとなるのは
・ 「循環」を知ること
・ 世の中の「構造」を見ること
ということですね。なんだかあらためて勉強した気分になりました。

投資は常に学ぶことが必要ですね。