このところ、コロナ禍からの経済回復への期待から米国株式市場は好調な地合いが続いており、「NYダウが史上最高値更新」といったニュースを目にする機会も増えています。そこで、今回は投資未経験の方のためにNYダウについて分かりやすく解説します。

NYダウとは

NYダウとは、米国を代表する株価指数の1つで、正式名称は「ダウ・ジョーンズ工業株平均株価」「ダウ工業株30種平均」です。米国の金融・経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」を発行するダウ・ジョーンズ社が1日1回算出しています。

名称に「工業株」が含まれているものの、工業株に限らず公益事業と輸送事業以外は組み入れできるようになっており、ニューヨーク証券取引所やナスダック市場に上場している米国の有名な30銘柄を厳選しています。(輸送株、公共株については「ダウ・ジョーンズ輸送株価平均」、「ダウ・ジョーンズ公共株価平均」という別の指数が用意されています)

NYダウに採用されると「ブルーチップ」と呼ばれることもあり、優良株の証ともいわれます。

【図表1】
出所:筆者作成

NYダウが注目される理由

 
NYダウは米国株式市場を把握する重要な指数として注目されていますが、その背景には

・影響力のある30銘柄が厳選されている
・下落しても回復し、長期にわたって成長し続けている

という2つの理由があります。それぞれ詳しく解説していきます。

影響力のある30銘柄が厳選されている

NYダウは米国で影響力がある企業が厳選されているため、米国株式市場の流れを把握する指数として活用されています。

構成銘柄には定量的なルールがありませんが、

・企業の評判が良いこと
・持続的に成長し続けていること
・投資家が高い関心を示す企業であること
・米国で創立し、本社を構えていること
・適切な業種配分を維持できること

という基準があります。この基準をもとに委員会によって検討され、30銘柄が選出されます。2020年12月時点での30銘柄は下記の通りです。

【図表2】NYダウ工業株30銘柄(2020年12月時点)
出所:ブルームバーグよりマネックス証券作成

一定の業種に偏らず幅広い業種から選定されていること、コカ・コーラやナイキ、マイクロソフトなど世界的な企業が名を連ねていることが分かります。

企業の知名度や成長性、投資家からの関心という視点を踏まえて慎重に選別されているため、結果として影響力のある企業が集まり、信頼できる指数として使われています。

下落しても回復し、長期にわたって成長し続けている

【図表3】NYダウと日経平均株価の比較(1970年~)
出所:マネックス証券作成
1970年1月末を1として指数化
2020年12月末時点

NYダウは誕生をしてから120年以上の歴史がある指数です。その間にはブラックマンデーやリーマンショックなど株価が暴落する金融危機も起こりましたが、米国の経済成長とともに約120年で約620倍にまで成長を遂げています。

例えば、1987年10月19日に起こった「ブラックマンデー」では22.61%の下落率となりNYダウは大暴落しましたが、その後、しっかりと持ち直しています。

このようにNYダウには一時的に下落しても回復し、長期にわたって成長が継続している強さが見られます。

NYダウの3つの特徴

 
続いて、NYダウの特徴について見ていきましょう。

NYダウには

・不定期で構成銘柄の入れ替えを行なっている
・「株価平均型」で算出されるため各銘柄の株価変動に左右されやすい
・「ダウの犬」と呼ばれる投資戦略がある

という3つの特徴があります。それぞれの特徴について、詳しくご紹介します。

不定期で構成銘柄の入れ替えを行っている

NYダウの構成銘柄は、委員会によって定期的に見直しが行われています。NYダウの銘柄であり続けるためには、先述の条件を満たし続けなければいけません。

そのため時代の流れや社会情勢を踏まえ銘柄の妥当性を検討し、必要に応じて不定期に入れ替えを行なっています。

実際に2020年9月には、約2年ぶりに下記の3銘柄の入れ替えがありました。

【図表4】
出所:マネックス証券作成

銘柄入れ替えの詳しい理由は非公開となっていますが、今後の成長が期待できる銘柄が新たに組み入れられたようです。

このように、委員会により銘柄の妥当性を検討し不定期に入れ替えを行うことで、有益な指数であり続けられるよう工夫されています。 

「株価平均型」で算出されるため各銘柄の株価変動に左右されやすい

NYダウは株価をベースとした「株価平均型」を採用しており、構成銘柄の株価合計 ÷ 構成銘柄数 ÷ 除数で算出されています。

除数は急激な変動や誤差を避けるために用いられる数値で、状況に応じて調整されます。

株価平均型とは

構成銘柄の株価の平均を示した指数で、⽇経平均株価・NYダウに採用されている

NYダウで採用されている算出方法である株価平均型は、各銘柄の株価に左右されやすいことが特徴です。1日で急落した銘柄が複数あると株価の平均値は下落しますし、逆に1日で株価が大きく上昇した銘柄があれば前日よりも株価の平均値は上昇します。

また、同じ株価平均型を採用している指数として⽇経平均株価がありますが、⽇経平均株価は225銘柄の平均値を指標としています。それに対し、NYダウは30銘柄で構成されているので、1銘柄の株価が与える影響が大きいのです。

NYダウは各銘柄の平均値を取った指数であり、各銘柄の株価に左右されやすい側面があることを把握しておきましょう。

S&P500やナスダックとの違いは?

米国株式市場の主要株価指数にはNYダウの他にも「S&P500」や「ナスダック」がありますが、この2つは「時価総額加重平均型」を採用しています。

NYダウは株価をベースとした指数ですが、S&P500やナスダックは時価総額をベースとした指数ですので、銘柄の時価総額に左右されるところが大きな違いです。

時価総額加重型とは

基準点と比較し、時価総額がどのように増減しているのか分かります。
TOPIX、ナスダック総合株価指数、S&P500などに採用されています。

算出方法:構成銘柄の時価総額の合計÷基準点の時価総額合計

S&P500の仕組みや特徴については、こちらの記事をご覧ください。

「ダウの犬」と呼ばれる投資戦略がある

NYダウを活用した有名な投資戦略に「ダウの犬」と呼ばれるものがあります。

初心者でも挑戦できる考え方で、まずはNYダウの銘柄を高配当順にして上位10社に分散投資をします。その後1年ごとに見直しを行いながら、長期的な投資を行います。

参考記事:「ダウの犬」投資法で米国株の高配当を狙う

投資家からの関心が高い指数だからこそ、投資戦略の1つに取り入れられているところもNYダウならではの特徴だと言えるでしょう。

NYダウ終値更新のタイミングは、日本時間6:40頃(サマータイムの場合は、5:40頃)となります。

後編ではNYダウの歴史、構成銘柄の変遷について解説します。