今回は、前回の記事で紹介しましたNYダウと並んで米国株式市場の動向を示す株価指数として広く知られているS&P500について解説します。
S&P500とは
S&P500は、米国の金融市場指数を扱う企業「S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス・エル・エル・シー」が算出しており、1日に1回公表されます。
構成銘柄は、「ニューヨーク証券取引所」、「ナスダック」に登録および上場している銘柄から、時価総額や流動性、業種等を考慮して選出した500社となります。
アップルやマイクロソフト、フェイスブックなど知名度の高い企業が名前を連ねています。S&P500は、株式等に投資をする際に個々の企業動向ではなく、米国株式市場の動きを全体的に把握したいとき等に使用されます。また、投資信託やETFのなかには、S&P500のような株価指数に連動することを目標としている商品があります。
S&P500が指数として注目される理由
S&P500が、米国の主要株価指数の1つとして注目される背景として、
・厳しい採用条件を設けている
・60年以上の歴史を持つ指数
という理由が挙げられます。それぞれの理由について、詳しく解説していきます。
厳しい採用条件
S&P500の構成銘柄として採用されるには、一定の条件をクリアする必要があります。
S&P500は米国の主要業種の主要企業をカバーすることを目的としており、独自の委員会によって銘柄が選定されています。
公開されているS&P500への採用条件としては
・米国企業である
・時価総額が53億ドル以上
・四半期連続で黒字利益を維持している
・株に流動性があり、浮動株が発行済株式総数の50%以上ある
という4つがあります。
60年以上の歴史を持つ指標
S&P500は、60年以上の歴史を持つ株価指数です。1923年にスタンダード・スタティスティクス・カンパニーが市場トレンドを反映させたインデックスの開発を始めました。
当初は米国株式233銘柄を対象として毎週算出するスタイルでしたが、1926年になると総合株式指数として90銘柄に絞り、毎日算出するようになりました。
その後、計算の頻度や精度の改善と銘柄の追加が行なわれ、1957年3月に現在と同じ500銘柄を対象としたS&P500の基盤が完成しました。
S&P500の3つの特徴
S&P500の特徴としては
・「時価総額加重型」を採用
・銘柄入れ替えを年4回検討
・時価総額の大きい銘柄の動きに左右されやすい
という3つのポイントが挙げられます。それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
「時価総額加重型」を採用
以下の通り、主な指数は「株価平均型」と「時価総額加重型」のどちらかをベースに算出されています。
S&P500は「時価総額加重型」のため、基準点と比較したときの時価総額増減が一目で分かるところが特徴で、基準点である過去と比較して現状を把握できます。
例えば、基準点とする1月1日の時価総額合計を100とした場合、現時点での構成銘柄の時価総額合計が1,000になると、時価総額が10倍に増加していることになります。
銘柄入れ替えを年4回検討
S&P500は独自の委員会により、四半期ごとに銘柄入れ替えを検討しています。先述の採用条件をクリアしているのはもちろんのこと、時代の流れや各企業の業績、今後の見通しなどを総合的に判断し、米国の主要業種の主要企業をカバーできているか見極めているためです。
実際に2020年9月には、下記の3銘柄の入れ替えがありました。
オンラインマーケット、半導体、医療など最近のトレンドを色濃く反映した3銘柄が採用され、に百貨店「コールズ」や美容製品「コティ」などが指数の組み入れ銘柄から除外されました。
このように、時代に合わせて構成銘柄を入れ替えることで、米国株式市場全体の時価総額比率の約8割をカバーできるよう調整されています。
時価総額の大きい銘柄の動きに左右されやすい
S&P500は時価総額加重型のため、時価総額が大きい銘柄の動きに左右されやすい側面があります。
時価総額は、株価×発行済株式数で算出されます。時価総額が大きいとS&P500の全体の時価総額に占める割合も必然的に大きくなります。
以下はA社の時価総額が600兆ドルと仮定した場合の例です。S&P500全体の時価総額の5%を占めると仮定します。一方で、B社は時価総額が60兆ドルとA社の10分の1となりますので、S&P500全体の時価総額と比較すると割合が低くなります。よって、S&P500は時価総額を占める割合が高いA社の影響を受けやすいと言えます。
このように時価総額が大きい上位銘柄の動きに左右されやすいところがS&P500の大きな特徴となります。
後編ではNYダウとS&P500の違いについて解説します。