株式投資によって得られる配当金の利回りが高い銘柄は、高配当株と言われます。この記事では、高配当株を見分けるポイントや選ぶ際の注意点について解説します。

高配当株を選ぶ指標である配当性向とは?

株式投資で得られる利益には、株式の売却益、配当金、そして株主優待の3種類があります。売却益は株式を売却した時のみ得られますが、配当金は継続的に利益を得られる可能性があります。
この配当金の利回りが高いものを高配当株と言います。高配当株には、どのような傾向が見られるのでしょうか。

配当に着目して銘柄を選ぶ場合、指標の1つとして「配当性向」が挙げられます。配当性向とは、企業の純利益から配当金をどれくらい支払っているかを示した数値です。配当性向の算出方法はいくつかありますが、下記の計算式で求められます。

<配当性向の計算式>
配当性向(%)=配当金支払総額÷当期純利益×100

例えば、当期の純利益が2億円で、配当金の支払総額が6,000万円の企業であれば、配当性向は30%ということになります。同じく、当期純利益が2億円で、配当金の支払総額が2,000万円であれば、配当性向は10%です。配当金がなければ0%となります。
配当性向の適正な目安は30%前後とされているため、それ以上であれば高配当株だと言えるでしょう。

ただし、配当性向が高いということは、内部留保が少なくなるということでもあります。そのため、高配当の株を狙おうとして、配当性向ばかりに目を奪われてしまわないよう注意が必要です。

例えば、当期純利益が2億円で配当金の支払総額が6,000万円であれば配当性向は30%ですが、翌年、純利益が1億円に下がっても、前年同様に配当金を6,000万円とすると配当性向は60%になります。しかし、これは純利益の減少によって相対的に配当性向が上昇しており、健全とは言いにくい状況です。

企業の状況によっては配当性向を低くし、将来の投資のために内部留保を多くすることが、結果的に株価を上げることになり、株主としては大きなキャピタルゲインにつながるかもしれません。

高配当株を選ぶポイント

高配当株を選ぶにあたって、チェックしておきたいポイントがあります。そのポイントについて、ご紹介しましょう。

増収増益傾向にあるかをチェックする

高配当株を選ぶ際には、増収増益傾向にある企業かどうかをチェックしましょう。配当性向が高くても、株価下落の要因が見られる場合、安心して保有し続けることができません。そのため、中長期的に高配当が期待でき、そして株価が安定している銘柄を選ぶ必要があります。具体的には、増収増益が続いている企業を目安に選んでみましょう。
配当性向を見るだけではなく、事業が安定しているか、今後も成長が見込めるかなどを総合的に判断して銘柄を見ることが重要です。

株主還元に積極的か

株主還元に積極的かどうかも、高配当株を選ぶ際にチェックしたいポイントです。日本企業は欧米の企業に比べて、利益を株主への配当に回すよりも、内部留保として貯える傾向が見られます。
内部留保を確保しようとする理由としては、バブル以降の不況やリーマンショックなどによる影響が考えられますが、内部留保で新規事業への投資を行ない、リスクに備えることは企業にとって重要です。また、内部留保があるからこそ事業を継続でき、たとえ少額でも配当を出すことができるとも考えられます。

しかし、高配当株を選ぶという視点では、株主への還元について積極的かどうかという企業の姿勢を見極めることが重要です。その企業が過去どれくらいの配当を出してきたか、継続的に同レベルの配当を出しているかをチェックしましょう。併せて、企業の純利益や株価の変動幅も、確認する必要があります。

配当利回りをチェックする

高配当株を選ぶ際には、配当利回りもチェックするようにしましょう。配当利回りとは、購入した株価に対して、1年間でどれくらいの配当が得られるかを表した数値です。1株当たりの年間配当予想額を現在の株価で割り、100を掛けて算出します。

<配当利回りの計算式>
配当利回り(%)=1株あたり年間配当金額÷1株あたり購入価額×100

東証一部上場銘柄のここ数年の配当利回り平均は2%前後ですので、それ以上であれば比較的配当利回りが高いと言えるでしょう。

ただ、配当利回りは重要な指標ですが、それだけで判断することはできません。事業成長が見込めるかどうかも含めて判断する必要があります。他の指標と同様、総合的に検討した上で選ぶようにしましょう。

関連記事:配当利回りの算出方法

高配当株を選ぶ際の注意点

最後に、高配当株を選ぶ際の注意点をご紹介します。

株主としての権利確定日に注意

株主としての権利確定日に株式を保有していないと、配当を受け取れないことも注意しておきましょう。
株式の配当金は、企業ごとに決められている権利確定日の時点で、株主名簿に記載されている株主に対して支払われます。権利確定日に株主名簿に記載されていなければ、配当金は支払われません。株主優待も同様です。

また、株式を購入したらすぐ株主名簿に名前が記載されるわけではなく、購入した数日後に記載されることが一般的です。そのため、権利確定日当日に株式を購入したとしても、株式名簿に記載されるのはその数日後になるため、配当金は得られません。最低でも、権利確定日の2営業日前までに購入しておく必要があります。

なお、権利確定日前は株価が上昇し、権利確定日以降は株価が下落する傾向があります。権利確定日直前に購入してしまうと、割高な株価で買って損する場合もありますのでご注意ください。

関連記事:配当を受け取るための配当基準日とは

株式の売却も視野に入れる

配当金は長期的な利益が期待できるものですが、将来的には配当金が減ることも考えられます。また、業績が好調で株価が高騰してしまった場合、配当金の額が変わらなければ、再投資をしても配当利回りが低くなってしまいます。
このような場合は、長期的に株式を保有するよりも、売却することも視野に入れたほうが資産形成にはプラスになることもあるでしょう。安定的に高配当が期待できる銘柄であったとしても、将来的に株式を売却する可能性があるということも視野に入れておきましょう。

総合的な検討が必要

高配当株を選ぶ指標としては、配当性向や配当利回りなどがありますが、それらに限らず企業の今後の業績予想や配当金の傾向も確認するようにしましょう。高配当株だからという視点だけで選ぶのではなく、銘柄や時間を分散させ、リスクを抑えて長期的な資産形成することを前提に、銘柄を検討するようにしましょう。

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