2月21日に、ついに日銀が追加利上げを決定しました。政策金利である短期金利(無担保コール翌日物)を年0.25%引き上げて0.5%にしたのです。ようやく、といったところです。

1月に追加利上げが見送られた時点で、政治家と一部メディアは歓迎を表していたようですが、多くはせっかくのタイミングを逸してしまった、と見ていました。

この一ヶ月で消費マインドには大きな改善は見えないままですが、心配された景気回復が冷え込むといった状況にはならず、利上げ決定に踏み出せたのでしょう。

さて、今回の利上げに対する各市場への反応ですが、一般的に言われるセオリーとは異なる動きが見えました。これぞ、まさに「市場は生き物」と言われる所以です。理論どおりにはいかないものですね。

今回の利上げ発表後、各市場がどのように動いたかというと、
■為替市場 : 円安(ドル高)になった
■(日本の)株式市場 : 株価が上昇した
という反応でした。

一般的には、ある国で利上げが行なわれると、
■その国の通貨が買われる
■債券(金利商品の代表)の魅力が増し、買われるため資金が債券市場にシフ トする利上げ=金利負担の増加という考えから企業の業績圧迫が連想される 以上から株価が下がる
こうした流れが市場で起こると言われます。まさに、今回は「逆」の反応だったわけです。

ただし、この「一般的な動き」は正常な経済状況において、かつ、世の中の思惑が先行して動いていないことが前提となります。
今の日本が「正常な経済状況」か、といえば経済・景気のモノサシである金利が、そもそも正常ではないわけですから、とても正常・健康な状態とは言えないですよね。

金利がほとんどゼロの状態、つまり金利市場がほとんど凍結してしまったような状況が長く続いているわけです。景気はようやく、本当にじわじわと時間をかけながら(期間だけは長く「いざなぎ景気」をも超えてしまいましたが)、回復してきているところです。病み上がりでフラフラしていて、でも回復しつつあるような状態です。

正常な状況であれば、金利が上がればその金利目当てに外国から資金が集まってくるものですが、そもそも金利がほとんどないところからのスタートですから、わずか0.25%引き上げたところで、諸外国に比べて「魅力的な金利」になったかといえば、残念ながらノーです。また、政府からの利上げに反対するけん制も続くことが考えられ、連続しての追加利上げは予想しにくく、つまり次期追加利上げまではしばらくかかるだろうという思惑が市場に広がっています。
金利が高止まりしている米国との金利差はしばらく縮小しない、となれば日本円を買う原動力にはなってこないわけです。米ドル買いの方が儲かる、と判断されればたちまち為替は円安ドル高に動きます。

しばらく金利が上がらない=引き続き低い金利水準と考えられれば、有利子負債をもつ企業にとっても金利負担は大きくなりませんし、為替が円安であれば輸出企業にとっては大きなプラスとなります。(海外に輸出して代金を外貨で受け取れば、円安であればそれだけ日本円建ての受取金額は大きくなりす、)株価上昇はこうした事情が背景にありました。

セオリーを知っていても、現実の状況を把握しなければ市場の動きにはついていけなくなります。これは今の日本に限ったことではなく、どこの国においても事情は一緒です。「利上げ」一つをとっても、景気が好調なときにインフレ懸念から行なう「利上げ」、新興国などでインフレが加熱しているときの行なう「利上げ」、そして今回の日本のような異常な低金利時に行なう「利上げ」など、それぞれに対し市場は異なる反応をします。

市場は生き物で、かつそれぞれの市場が連動して動いています。もし日本株だけに投資をして、企業分析はばっちり行なっていたとしても、金利や為替市場の動きを無視してしまうと思わぬ株価の動きに翻弄されることもあるのです。
「投資」を行なうときは、経済全体を見る目も養っていくようにしたいですね。-----
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