前回、前々回と公的年金、確定拠出年金と取り上げてきました。もう一つ、多くの皆様に馴染みのある年金が民間の個人年金ではないでしょうか?

公的年金への不安から老後のための「自分年金」として個人年金に加入されている方は多いと思います。今やその中心とも言える商品が変額個人年金です。
変額個人年金保険というのはその名の通り、変額保険の年金タイプのものです。変額保険は、契約者の払い込んだ保険料をほかの生命保険の一般勘定とは別の特別勘定で積極的に運用する保険です。特別勘定というのはファンドのことで、投資信託と同様にファンドマネージャーが国内外の株式や債券などで運用します。変額個人年金を取り扱いしている会社は複数のファンドを揃えており、その中から契約者が自分で判断してファンドを選びます。

運用実績次第で、解約した時の戻り金や、将来受取る一時金額や年金額が変わっていき、運用がよくないと年金原資も最初の払い込みを下回る可能性もあります。(最低保証のあるタイプも出ています)
その運用の責任はファンドを選んだ契約者本人が負うことになるところは、先週取り上げた確定拠出年金と似ていますよね。
ファンドで運用するなど、変額個人年金は投資信託によく似た商品でもあるのですが、いくつか大きな違いがあります。

まず、なんといっても保険商品ですから万一の時には死亡保険金が受取れる点が違います。ほとんどの場合払込保険料相当額が最低保証されていますので、たとえ運用が上手くいっていなくても、死亡時には払い込み保険料を下回らない一定の金額が保証されています。

投資信託同様の投資商品であると同時に保険商品であるため、保険部分についてコストがかかることは事前に知っておきたいことです。通常の投資信託を購入することに比べると割高になるのです。
信託報酬といった運用に関する費用のほかに以下のような費用がかかります。・保険関係費…保障コスト
・口座維持費…かかる商品があるので注意
・解約控除…7年、10年など商品によって違う。中途解約に対してかかる。
保険商品であるためのメリットもあります。税制優遇です。
運用中に分配がないため途中で課税されることはありません。(これは無分配型の投資信託も同様ですが。)また、死亡保険金の相続税非課税枠の対象になります。

最後に注意したいのは、金融機関が破綻した時の扱いの差です。投資信託は販売会社、運用会社、資産管理会社のどこが破綻しても保有者の財産に影響はない商品ですが、変額年金は、保険会社が万一破綻した時には、一般の保険商品と同様、その時点の責任準備金の9割までは補償されますが、全額保護ではありません。

違いについて、簡単に説明してきましたが、どういう方が変額個人年金に加入されるとよいのでしょうか?以下に挙げてみました。

● 将来のために運用はしたいが、保険(死亡保障)も必要な方
● なかなか意思を強くもてず、運用中の投資商品をすぐに売却しては使っ   てしまう方
● 相続対策が必要な方

日本人が保険好きで加入率がとても高いことは以前にも書きましたが、保険は必要なだけ加入することは大切ですが、むやみに加入すると保険料負担がムダになることもあります。コストがかかることをよく知って、すでに十分な保険に加入されている方は、保険機能もある変額個人年金が本当に必要か考えてみることも大切でしょう。

きちんと意思をもって長期投資を心がければ、老後の資金準備という運用面に限定すれば、投資信託での運用でも変額個人年金に代替できることをぜひ知っておきましょう。