運用を行う、保険に加入する、こうしたお金にかかわる行動(経済行動)を起こすとき、人はまず「何(どれ)がおトクか?」「損しないか?」といった点を考慮します。当然自分だけ損したくはありませんし、これだけの情報があふれた世の中ですからおトクな情報も入手しやすいわけです。(探すのが大変!ということはありますが)
少し前まで、といっても10年一昔と言いますので一昔以上前になりますが、日本人はおトクな情報を自ら見つけようとすることなく、目の前に差し出されたものを疑いなく購入していたのです。
付き合いのある(口座のある)金融機関のなじみの営業員に「今はこれがオススメです」と言われれば、自分で確認することなく購入していました。
家や会社に出入りしている保険の勧誘員から「皆さんこれに入っていますよ」と言われれば、そんなものかな、と加入していました。
こうした営業スタイルはGNP、つまりG=義理(GIRI),N=人情(NINJO)、P=プレゼント(PRESENT)とも言われる日本独特のもので、要はどこの金融機関のどんな商品を購入してもさほど違いもなく、国に守られた金融機関も破綻することなく安心していられるという特異な状況にあったがために、顧客と営業員との信頼関係、親密度などが決め手になっていたのです。
しかし時代は変わりました。金融機関は変わり(つまりどこでも同じということはなくなり)、情報が氾濫し、何より日本人が考え方を変えてきました。 自己責任時代の到来と言われた当初は戸惑ったものでしたが、自分のことは自分で守ろうという意識を持つ人が確実に増えています。
だからこそ、営業員が商品のオススメをする対面式の金融機関ではなく、情報とスピードを提供できるネット金融機関(しかも店舗がなく人件費が少なく済むのでコストが安い!←大切なポイントです)に人気があるのです。
さて、話を冒頭の「おトクを求める経済行動」に戻します。
皆様も日々金融機関や金融商品を比較検討しながら行動を決めていらっしゃると思います。リスクとリターンを考え、これだけのリスクをとるのであれば、この程度のリターンは欲しい、といった基準を各々もっていらっしゃることでしょう。「おトク度」については「価格の安さ」だけだと考えていらっしゃる人は少ないのではないでしょうか。情報量の多さ、質といったサービスで「おトク度」を計ることもあります。
でも実はおトクだけでは人は行動しなかったりもします。
いろいろと検討しても最後には単純に「好き」か「嫌い」か、で行動を決めていたりするのです。
この金融機関の雰囲気が好き、経営方針に共感できる、テーマカラーが好き、なんとなく好き・・・単純に好みの問題です。
この株は将来有望かもしれないし株価は上がるかもしれないけれど、なんだかこの会社はすごく嫌い。こんな理由で買わないこともあるかもしれません。似たような投資対象、コストも同じくらい、過去の実績も同じような二つの投資信託。運用会社が好きなほうにした、ということもあるでしょう。
実はこうした数字では計りきれない「好み」「満足度」というものが最後には決め手となっています。自分自身の満足度、好みが判断基準となっているところは、一昔前のGNP営業のような対人感情に支配されているものとは違います。
経済学的にも「効用」という言葉で表され、人々の行動選考基準の重要な部分として認められています。
どんなにオススメだと言われても、どれだけ多くの人が買っていても、たしかにおトクだと納得しても、買うことによって何となく落ち着かなかったり、居心地の悪い想いをしたり、どうも気になって夜も眠れない!なんていう状況になったりしたら満足度が高いとは言えませんよね。
情報を充分に取捨選択し、効率だけを求めず、かつ自分の素直な好みも考慮した「満足度の高い経済行動」をするようにしたいですね。