先週に引き続き、ゼロ金利解除後の金利についてのお話です。
引き続き金利上昇のニュースがチラホラと目に付きますね。
さて、個人の関わるお金のマネジメントは[殖やす][借りる][備える]の3つが代表です。金利上昇による影響について、[殖やす]については先週お話しました。
金利が上がれば利息も増えるのですが、金融商品の選び方一つで将来の金利上昇のスピードに置いてかれてしまうと、かえって損をすることもあることなどについて説明しました。
今週は[借りる]について説明していきましょう。
先週書きました以下の文は覚えている方はいらっしゃるでしょうか?
「金利が急激に上がるということは経済にとってマイナス面も大きいことから、日銀としても徐々に様子を見ながら調整していこうという姿勢ですから、それほど簡単に預金金利が跳ね上がることを期待するのは難しいでしょう。」
金利が上がることは経済にとってマイナスにもなるのです。その大きな理由の一つが[借りる]に関係しています。お金を借りると利息を払います。これは個人も企業も、そして国も一緒です。
ご存知の通り、日本という国は国債を大量発行しており、そのせいで借金まみれの状況にあります。一般家計に例えれば、500万円の収入の家庭が毎年800万円支出をし、差額分を毎年借金しながら生活をしているという極めて不健全な状況にあります。(平成18年度予算参考)その借金の方法が国債の発行です。 現状の日本において、残念ながら即この借金生活を止めることができる状況にはなく、つまりは来年以降も(金額を減らすことができても)国債を発行することで、自転車操業せざるをえません。
これまで金利はほとんどゼロだったがために、借金による利息の負担というものは重いものではなく、それだけ気軽に借金ができました。ところが金利が上昇すれば国にとって、新たに金利負担という「負」を背負うことになってしまうのです。
景気回復がしっかりと見え始めた昨年暮れくらいから、そろそろ量的緩和政策解除→ゼロ金利政策解除の実現を視野に入れようと動き出した日銀に対し、政府サイドから「まだ景気は不安定だ」「まだデフレ状態だ」といったけん制するようなコメントが出ていたのもこのせいです。(金融政策を行うのは日銀で、政府とは独立した関係になっています。)
金利上昇による利息負担は、企業にとっても同じことです。企業の多くは借金をすることで、設備投資を行ったり、業務拡大をしていきます。(もちろん無借金経営の会社もあります。)今までタダみたいな金利で借金をすることができたのですが、金利が上がれば利息を支払わなければならず、当然財務状況に影響を与えます。
こうしたことを連想されることによって、企業業績の悪化→株価下落というように株式市場にも影響を与えます。
ちなみに[借りる]とは話が変わりますが、金利上昇は為替市場にも影響を及ぼします。為替レートというのは二国間の通貨の交換レートですが、その二国間の金利差が為替変動の大きな要因の一つとなります。世界のお金は金利の高い方へ動く傾向があります。(ただし、新興国で超インフレのため金利が高いというようなケースは除きます。)ドル円の場合で言えば、ドルの金利が上がり、円金利が低いままであれば、ドルが買われやすくなります。ここでもし円金利が急上昇すると金利差が小さくなることからドルを買いにいこうとする力が弱くなることも考えられます。
もし円金利が急上昇して円が買われ、つまり大幅な円高ドル安に向かったらどうなるでしょう?輸出中心の日本の多くの企業には厳しい状況になります。(ドル円=117円のとき、1万ドルは117万円になりますが、ドル円=100円の円高になると同じ1万ドルが100万円にしかなりません。)
その結果、輸出企業の業績悪化が予想され株価が下落することも考えられます。
最後に個人への影響です。個人の場合、一番身近な[借りる]は住宅ローンかと思います。ゼロ金利解除までは、稀に見る低い金利で住宅ローンを借りることができました。特に見た目の金利水準が魅力的に映ったのは短期の変動金利ローンです。預金すると0.1%くらいしかつかなかったときでも長期固定金利ローンだと2%以上の金利でしたので、1%台前半の変動金利を利用された方も多いと思います。ただ注意が必要なのは3年や5年といった短期で見直しをするタイプを選んでいる場合、次回の見直し時に金利が上昇していれば、全額繰上げ返済でもしない限り、確実に金利負担が増えることになります。当然生活を直撃することになりますので、現在どういったタイプの住宅ローンを組んでいるのかは早めに再確認することが必要でしょう。
また、前述したような各市場での影響は個人投資家にとっては見逃せない部分でもあります。
金利が上昇することによるメリットだけでなく、デメリット=マイナス面についても認識をして、早めに対策を考えておくようにしたいですね。