日本銀行が19日、政策決定会合の結果と、注目の「金融政策の点検」を発表、長期金利の変動幅をわずかに拡大するとともに、ETF購入を調整した(図表1)。

具体的には、10年国債の目標金利についてはゼロ%を中心とし、変動幅を上下0.20%から0.25%に拡大した。

また、ETF購入については、若干複雑だが、1)年間12兆円という買い入れ上限は維持、2)但し、「年間6兆円を原則」としていた点は削除、3)買い入れ対象を、TOPIX、日経225とJPX日経400から、TOPIX連動のみに狭めた。つまり、今後はコンスタントに買うとは限らないが、下落時の買い支えの可能性は残された。対象については、ファーストリテイリングなど一部の銘柄の保有比率が高まることに配慮し、幅広く購入できるTOPIXベースとした。

加えて銀行の貸出促進のための付利制度が新設された。これについて日銀は、マイナス金利を深掘りした場合に貸出が縮小してしまうリスクを避けるため、としている。更なる緩和の手段があることを示したものだ。

 

注目点と市場への影響

今回の政策決定会合は、「点検」の結果日銀がどのような政策変更を行うのかが大いに注目されていたが、ETF購入対象を狭めたことと、新たな銀行付利制度を設けた以外は、従来報道されていた通りとなった。

目標長期金利のレンジについては、わずか5bpの拡大であり、かつ、昨日の後場に報道された時点で既に金利は上昇していたため、今日の発表後には(一旦スパイクしたが)わずかな上昇で着地した (図表2-1)。足元では、日本の金利は米国の上昇に連動しなくなっており(図表2-2)、今日の発表も通過したことから、日本の金利については当面大幅な上昇は考えにくいだろう。

 
 

一方、ETF購入枠については、今回の変更の結果、日銀のコンスタントな買いが入りにくくなるという点で、どちらかといえば市場にはマイナスである。特に、対象から外れた日経平均は、政策発表後下落し、NT倍率は急低下した(図表3)。

 

しかし、今後の市場に対する今回の政策変更の影響は少ないだろう。

年明け以降、日銀の購入額は極めて小さくなっていたにも関わらず、株式市場は自律的に上昇してきている (図表4)。日銀の買い支えに依存していたわけではない。

 

また、個人投資家の買い意欲も一層高まっている。直近のマネックス個人投資家サーベイによると、個人投資家は、消費は抑制的な割に、投資意欲は、極めて旺盛である。(図表5-1、5-2)。この傾向は若年層で特に強くなっているが、足元では40-50代にも同様の傾向が見られる。更に、残された「上限12兆円」という巨大な購入枠は下落時のバックストップとしては十分であり、投資家の心理的な安心感につながる。

今回日銀の「点検」というリスクイベントを無難に通過したことから、日本の株式市場は当面強いモメンタムを維持できると考えられよう。