香港には八達通(Octopus)というカードがあり、日本のSuicaのような役割を果たしています。実は、このOctopusの技術は、ソニーの開発したFeliCaがベースになっています。地下鉄やバス、フェリーに乗るときにSuicaと同じように運賃の支払いに使ったり、スーパーやコンビニでの買い物にも使えます。住居によっては登録すればマンションの鍵として使うことも出来て、入り口でかざして中に入るような仕組みにもなっているのです。香港は、FeliCaの信頼性や利便性にいち早く目をつけ、これを採用してきました。今では、Octopusは、香港での生活の一部に欠かせないデジタルマネーになっています。

Octopusを猛追しているのが、中国本土発のアリペイやウイチャットペイです。ご存知かもしれませんが、二次元バーコードを読み取って、支払いに使うもので、信頼性にはやや劣りますが、店の導入コストが安いために、急速に普及しています。香港でも、最近はリテールショップのいたるところでプロモーションを実施していて、どんどん普及してきています。日本でも、ちらほら利用できることを示すステッカーを見かけますね。

デジタルマネーと並んで、香港で急速に進んでいるデジタル技術はいわゆるAI化とアプリを使ったオペレーションの効率化です。香港のハンバーガーファーストフード店での話です。レジから少し離れた場所に巨大なタッチパネルが設置してありました。この巨大なタッチパネルはデジタルメニュー表になっており、食べたいものを選択します。そして支払いは、そのままクレジットカードやOctopus、アリペイなど様々なデジタルマネーをタッチするだけで、済ますことが出来るようになっています。言葉の壁で時間を取られず、スムーズに自分のペースでミスなくオーダーできて、とても便利で魅力的に感じます。オーダーを受ける側も、タッチパネルでオーダーが入ったら作るだけなので非常に効率的です。

他の例では、Uberという配車アプリがあります。Uberはアプリで行きたい場所と現在地を指定して車を呼ぶと、自分がいる場所まで迎えにきてくれ、目的地まで連れて行ってくれる仕組みです。アプリで行き先は指定しているし、料金も呼ぶときに提示されている上、事前に登録したクレジットカードで決済は済むので、言葉の壁があっても、問題なく行きたい場所に連れていってもらえます。とても便利です。他にも、大手コーヒーチェーンでは、事前オーダーアプリが普及していたり、自転車のレンタルもアプリで手続きができたりと、とにかくFace to Faceで人を介することなく、様々なサービスが受けられるようになってきています。

他にも、「シェアバイクアプリ」はとても便利です。

今、香港やその隣街の深センで移動手段として急速に認知が広がっているとても便利な仕組みです。しばらく前に、日本でも報道されていましたが、その時はおそらく失敗例として取り上げられていました。捨てられた自転車の山の写真とともに、事業として上手くいかなかった話だったと思います。しかし、この「シェアバイク」も、現在は、とてもよくできた仕組みに進化しています。「シェアバイク」の仕組みはこうです。先ず、ダウンロードしておいたアプリを起動します。現在地に近い自転車がある地点の地図が表示され、GPS機能の付いた自転車の空きが何台あるかがわかります。こうして地図上で今使われていない自転車とその場所を簡単に探しだすことができるのです。

選んだ自転車の置いてある場所まで行き、自転車についているQRコードを読み取ると自転車の鍵が自動ではずれ、シェア(レンタル)開始です。そこから自分の目的地まで行き、自転車に鍵をかけて返却するまでがレンタル時間となります。使った時間で利用料金が計算され、支払い方法は事前に登録したクレジットカードに課金されます。都度入金したりその場でお金の出し入れをしたりしなくて済むのも便利です。

とても、気になったので、街角でシェアバイクを使ってみました。

香港にはサイクリングロードがいくつかあり、とても整備されています。シェアバイクで、そのうちの一つに行きました。アプリを起動したところ、実にたくさんの自転車が表示されました。残念ながら、既に壊れている自転車もいくつかありましたが、そのような自転車はアプリで報告すれば管理者が修理に出してくれます。使用する自転車を選んで、QRコードを読み取るとロックが外れ問題なく使用できました。

その後、1時間ほどサイクリングをして、香港での自転車散策を楽しみ、次の目的地に近い豆腐花(香港のローカルデザートです)のお店先に自転車を置き、鍵をかけてレンタル終了です。元にあった場所に自転車を返しに行く必要もなく、自分の目的地で降りることができるのでとても便利でした。ちなみに、1時間のレンタルで140円程度でした。手頃で少し変わった香港探検にはオススメです。

香港は土地が狭く、運動するスペースが限られています。運動不足解消のために、ハイキングコースがたくさんあったり、マンションの中にジムとプールが併設されていたりと工夫されています。そんな中、このようなサービスができたことによって、自転車を保有しなくてもサイクリングを楽しめ、楽しく運動できる。シェアバイクは合理的で良いなと思いました。日本でも、東京都心では、似たような取り組みが始まっていると聞きますが、香港ほど便利で普及しているでしょうか?

さらに驚くことに香港の直ぐお隣の中国の深センという街に行くと、デジタルマネーもアプリも、もっと進んでいます。無人コンビニに無人バス、ファーストフードも無人店舗でレジに人がいないなど、恐ろしいほどに無人化・AI化が進んでいます。こうした新しい取り組みから目が離せません。日本以外で新しい取り組みを体験して歩いてみるのも、面白いかもしれません。

コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先