自分に合った借り入れの目安とは

住宅を購入するとき、多くの方が住宅ローンを利用します。実際どれくらいの物件を購入できるのかは、借入がどれくらいできるかによって変わってくることがほとんどではないでしょうか。

そう考えると、できるだけ多くの借り入れができれば物件の選択幅は広がるわけですが、その分返済額の負担も大きくなります。無理なく返せるローンから、借り入れの目安を考えるポイントと注意点を考えていきたいと思います。

手取りの2割から検討する住宅ローン

無理なく暮らせる住宅費用は、手取りの2割を目安にすると良いと言われています。実際に筆者も相談を受けていると、子育て世帯の場合、住宅費が2割を超すと教育費や老後費用を貯めるのが難しく、自由に使えるお金が目減りして暮らしに満足できないケースが少なからずあるようです。

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世帯年収 600万円
現在の年齢 35歳の夫婦
定年年齢  65歳
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上記のような家族構成で考えてみましょう。

手取り年収が600万円の世帯なら、その2割は120万円です。月に10万円(120÷12ヶ月)が住居費用になります。気を付けていただきたいのは住居費用=住宅ローンの返済額ではなく、住宅のランニングコストも含めて考える必要があるということです。

住宅を所有すると、住宅ローンの返済額以外に固定資産税の納税も発生します。またマンションなら修繕積立金、一戸建てでも外壁や屋根などのまとまった修繕費用のための準備もしていかなくてはいけません。

修繕費用や固定資産税の準備額を月に2~3万円と考えると、月10万円の住宅費用のうち、ローンの返済に充てられるのは7万円ということになります。

現在の年齢が35歳で、定年年齢の65歳までに完済を目指すのであれば、借入期間は30年間です。

例えば、全期間固定で1.32%の利率の場合、毎月の返済額を7万円とすると借入可能額は2,079万円です。変動金利で仮に金利が上がらず0.7%とすると2,272万円が借入可能額となります。

これに自己資金(頭金)として出せる金額を加えたものが、実際に購入できる物件価格です。ただし、物件価格の5~7%程度は諸費用として別途かかりますので、その資金も手元に残せるように自己資金を計算するようにしましょう。

現在の家賃から検討する住宅ローン

現在賃貸に住んでいて、これから住宅を購入しようと考えている場合、現在の家賃を目安に物件価格を検討することも多いのではないでしょうか。毎月の支払額のイメージがつきやすいため、住宅ローン返済額を家賃と同額にしてしまいがちですが、やはり住宅を購入するとかかるランニングコストを家賃の額から差し引いて考えなくてはいけません。

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現在の家賃 13万円
現在の年齢  40歳
定年年齢   65歳
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修繕費用の積立金や固定資産税などが3万円だとすると、毎月のローン返済額は10万円になります。65歳までに完済を目指すなら、借入期間は25年間となります。

毎月の返済額を10万円とし、利率を1.32%とすると借入可能額は2,554万円。利率を0.7%とすると借入可能額が2,751万円です。

利率の低い金利で計算すると借入可能額は大きくなりますが、その利率が変動金利の場合は今後利率が上がる可能性も考慮しておかなければいけません。家計にゆとりがない状態で、たくさん借りられるからと安易に変動金利で試算することのないように注意しておきたいものです。

必要貯金額と生活費から住宅ローンを算出する

生活に必要な支出や貯金は住宅関係以外にもありますから、将来のための貯金や今の生活費からローンの借入額をシミュレーションしてみるのも一つの方法です。例えば4歳と2歳の子どもの教育費のために月に5万円、自身の老後のために月に6万円、そのほか3万円の貯蓄の必要があり、住居費以外の生活費に40万円かかっているとしたら、住宅費用にどれくらいお金をかけられるか?と考えてみるのです。

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定年までの年齢 残り30年
月の手取り 夫婦で70万円
先取り貯金    14万円
生活費      40万円
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このような家計ですと、残りの住居費に掛けられる金額が月に16万円。修繕積立金や固定資産税などを3万円とすると、ローン返済に充てられる金額は13万円となります。
利率を1.32%とすると借入可能額は3,862万円。利率を0.7%とすると借入可能額は4,220万円です。

年齢が若く共働きで収入が多いご家庭などはローンの借入額も増やせることが多いですが、将来のライフプランが変わる可能性もあります。出産後に働き方を変えたり、転職などで収入減となり必要な貯金ができなくならないよう、無理な借り入れは禁物です。

住宅ローンを借りるときに気をつけたい3つのポイント

住宅ローンは長期間での借入になることが多いため、今だけではなく、今後起こりうる可能性も考慮することが大事です。こんなはずではなかったとならないためにも、よくご相談をいただくお悩みを事例に注意点をご紹介したいと思います。

夫婦それぞれでの借り入れ

共働きだと夫婦それぞれの名義で住宅ローンを借りることもよくあります。夫婦で借りることで借入金額を増やすことができたり、住宅ローン控除をそれぞれが使うことで節税することもできます。ですが、これから出産や子育てを予定している方は少し注意が必要です。育児休業等を取得したり、正社員からパートになるなど働き方を変えて収入が減ってしまうと住宅ローン控除が使いきれなくなることもあります。今後のライフプランも踏まえて夫婦での割合をどうするか検討しましょう。

ボーナス払いでの返済

月々の返済額を抑えるために、ボーナス返済を組み込むこともあります。ただし、ボーナスは給料とは違い支払いが保証されたものではありません。会社の業績や転職などによってボーナスが減ったりなくなったりしても、ボーナス月には増額した分を払い続けなくてはいけません。また定年後はボーナスはありませんから、その分も合わせて支払いができるように事前に計画を立てることが肝要です。

団体信用生命保険への未加入

ローンを借りた人に万が一のことがあったときに返済が免除される団体信用生命保険ですが、フラット35などは団体信用生命保険に加入しなくても契約することができます。だからといって、契約しないまま万が一のことがあった場合、残された遺族が住宅ローンを返し続けていくことになります。よほどの事情がない限り団体信用生命保険に加入するか、ローンの返済ができるような民間生命保険に加入するなどしましょう。

住居費にどの程度金額をかけるかは個々のご家庭の価値観もありますので、一概にいくらが正解というものはありません。現在の収入から見た負担や、今後のための必要貯金額など色々な視点から検討して、無理のないマイホームが手に入れられるように計画してみてください。