3月上旬の中国株は調整基調が続いています。上海総合指数は2月末3,509.080ポイントから3月15日には3,419.946へと2.5%の下落となり、香港ハンセン指数は2月末の28,980.21ポイントから28,833.76ポイントへと0.5%の下落となっています。

中国株の調整が続いた理由

調整が続いている大きな理由の1つに、中国の金融当局が引き締めの姿勢を示していることがあります。

中国銀行保険監督管理委員会の郭主席は3月2日に中国の金利が2021年は上昇する公算が大きいとの見方を示し、中国国内での新型コロナウイルス流行を抑え込んだ後に中国当局が金融政策の引き締めに動く方針を示唆しました。

日米欧の金融当局が金融緩和の姿勢を継続していることを考えると、中国の中央銀行だけ異例の措置と言えるでしょう。

なお、郭主席は先進諸国では金融市場は活況で、いずれバブルが崩壊するとの懸念が高まっているとも指摘しています。株価の上昇には緩和気味の金融政策と財政投資拡大が必要になってきます。欧米の中央銀行が緩和姿勢を示している中で、この中国当局の発表は市場に冷や水を与えるような内容でした。

一方で、金融緩和と財政投資拡大や新型コロナウイルスのワクチンの普及見通しによって、世界経済に対する明るい展望が出てきたことから、米国の長期金利が上昇しました。また、ここまで買われていたITハイテクなどの成長株からバリュー株に資金がシフトしたことにより、世界的な成長株が下落したことなども中国株が調整した要因となっています。

香港市場に新設されたハンセンテック指数は2月末の8,954.44ポイントから3月15日には8,264.42ポイントまで下落しており、およそ半月で7.7%もの下落となっています。香港・中国株はハイテク株主導で、年初から世界をリードする大きな上昇となってきましたので、その分、売りも大きくなったように思います。

ハイテク株の調整は続く可能性があるものの引き続きチャンスは続く

香港のハイテク株が大きく下落している理由は他にもあります。3月12日の香港経済日報では、アリババ(09988)の監督管理を強化する中国金融当局の次の標的がテンセント(00700)になるとの報道がありました。

この報道を受けて同日のテンセント(00700)は下落しています。さらに中国の国家市場監督管理総局(SAMR)が独占禁止法に違反する取引があったとして、テンセント(00700)と美団(03690)を含む12社に対し罰金を科したと発表したことや、中国政府がオンライン市場の規制強化を計画しているとの報道もありました。

中国当局としては巨大IT企業の影響力が大きくなりすぎる懸念があり、これを当局の統制下に置き、大手のテンセント(00700)とアリババ(09988)を標的にすることによって、他のIT企業にも影響を波及させたい考えがある様子です。

もっとも、テンセント(00700)は監督管理環境の変化に応じて、規定などに完全に適合するように取り組むなど冷静な対応をとっております。そのため、目先の株価は重い動きになる可能性もありますが、最終的な同社の成長性にはあまり影響がないのではないかとも考えます。したがって、株価が大きく下落したところがあれば投資を検討する機会になると思います。

なお、同期間に発表された中国の経済指標は今後、中国経済の回復を予感させるものでした。2021年1~2月の輸出は前年同期比60.6%増と、市場予想の40.0%増を大きく上回るものでしたし、輸入も22.2%増と、市場予想の16.0%増を大きく上回りました。

2月のマネーサプライ(M2)も市場予想や前月実績の9.4%増を超える10.1%増となりました。また、1~2月の小売売上高も33.8%増と市場予想の32.0%増を超えて着地し、鉱工業生産も35.1%増と市場予想の32.2%増を上回っています。

中国本土がバブルを懸念して金融引き締めに動くとしても、世界的な金融緩和は継続しそうな状況です。したがって、海外の資金が直接影響する香港市場は、中国の影響を受けつつも、海外からの資金によって株価は押し上げられる可能性があるため、下落したところは引き続きチャンスになるのではないかと思われます。