「小米=Xiaomi」の上場は、香港市場で今年最大規模の61億米ドルの調達であり、7月に予定されている。上場後の時価総額は6~7兆円になるとも言われている。 6月28日現在はブックビルディングの最中であるが、香港市場で上場する場合は、一般的には新規発行株式は機関投資家向けに大半が割り当てられ、残りの僅かな部分が個人投資家向けに販売される。このあたりは日本のIPO株の投資家は個人が中心であるのと異なる。例えば日本郵政グループのIPOの時は特殊な例かもしれないが国内では95%が個人投資家向けであった。 今回も、全体では新規発行株式数1,030億株の内、個人向けに販売されるのはわずか1億9百万株であるが、4日間のオファー期間中の個人投資家の積み上がりは、1億9百万株に対して約8.5倍の積み上がりである。一見この数値は日本の基準に合わせると高いように見えるが、最近の積み上がり倍率から言うと最低倍率に近い。因みに最近上場した倍率の高い銘柄を見てみると300倍から600倍程度にも盛り上がっていた。しかし、このIPO株の絶好調ぶりも最近は今一つ冴えなく、地元新聞によると今年の上場を果たした企業87社の内上場後1か月以内に53社が初値を下回り、20%の企業が上場直後発行価格を下回るという結果に終わっている。最近の米中貿易戦争の影響下、上海株式が6月は不調でドルベースで13%も下落しており、ハンセン指数も引きずられ形で10%程度も下げているため、結果的にIPO市場にもその影響が影を落としているのは否めない。小米の上場は、米中貿易戦争の犠牲になっているとの声も聞かれる。 また、香港の個人投資家の申し込み倍率を数百倍にするのを可能にするのは香港ならではのIPOローンの存在は大きい。IPOローンとは日本と異なり、IPO株式の購入申し込みを証券会社にした時点で現金を証券会社においておく必要がある為、個人投資家は銀行または証券会社から、ローンで軍資金を借りて申し込みをするのである。借り入れは希望株数の10倍から20倍相当の金額で借り入れをして、数百倍の倍率なので最終的は希望株数にも満たない株数しか割り当てられず、残金は全て銀行または証券会社に返済される。このIPO金利も最近3%に上がっており、このあたりも相応の上昇が見込めないとIPO株をIPOローンで買えない水準ともいえる。借りる方は支払金利と割り当て株数と、値上がり見込みの3要素のバランスを見比べつつ、10%から20%の値上がりで初値が付かないと経済性が確保できないという事で、申し込みに消極的になる。このあたりの金利事情も最近のIPO市場に影を落としているのかもしれない。つまり米国金利の上昇が香港IPO市場にも及び、ここにも米中の間接的経済戦争の影のようなものが見え隠れする。 アップルのPERに対して随分と強気な価格設定もそうであるが、小米の上場に関していえば、一私企業の上場事情というより、米中関係が色濃くIPOに影響してくるところが興味深い。まあ、それだけ小米が、実質「国家企業」である証かもしれない。 これから暫く小米上場動向から目が離せない。

コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先