2月下旬の中国株は上昇後に調整となっています。しかしながら、チャートは非常に綺麗なままで上昇トレンドを維持しているかのようです。

上海総合指数は50日移動平均線で綺麗に反発しており、香港ハンセン指数は50日移動平均線よりも上で反発しています。上昇時はハイテク株が主導して上昇しましたが、調整もハイテク株主導での調整となっています。

調整となった背景

調整のきっかけとなったのは米国で長期金利が上昇し、株価に割高感が感じられていた米国のハイテク株に調整が入り、その流れが波及したものです。しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は2度の議会証言の中で、「金利上昇は景気回復を織り込んだ自然な表れで物価上昇は一時的」とし、「FRBが目指す物価や雇用市場の回復には程遠い」と超緩和姿勢の継続を再確認しています。

また、欧州中央銀行(ECB)のフランソワ・ビルロワドガロー理事は足元の利回り上昇には根拠がなく、不当な利回り上昇への「対応は可能で必要」とコメントしました。

このように各国の中央銀行が金融緩和継続や政府の借り入れコスト上昇を容認しない姿勢を示したことから3月に入って長期金利の上昇が落ち着き、米国株のハイテク株が反発し、香港のハイテク株も反発する形となっています。

前述のパウエルFRB議長の発言にもある通り、FRBは緩和姿勢を崩しておらず、FRBのバランスシートは少しずつですが、拡大を続けています。これはもちろん、長期金利を抑える要因になります。株価が本格的な調整局面に入るとすると、FRBをはじめとした世界の中央銀行が金融引き締めを行うようになってからだと考えられます。

特に今回は世界的にインフレ率が低水準のまま推移しているため、金融引き締めに転じるまではかなりの時間がかかると予想されます。このように考えると、現在の優良銘柄の調整はチャンスと考えられると思います。

政策期待は株価後押しとなるか

一方、2月下旬に発表された中国の経済指標はやや予想を下回るものでした。2月28日に発表された2月の中国国家製造業PMIは50.6と市場予想の51.0や1月実績の51.3を下回りました。中国国家非製造業PMIも51.4と市場予想の52.0や1月実績の52.4を下回っています。そして、3月1日に発表された2月のCaixin中国製造業PMIも50.9と、市場予想の51.4や1月実績の51.5を下回っています。

もちろん中国の1月~2月の経済指標は旧正月の関係もあって不安定になることが多いのですが、予想を下回る数字が出てきたことはネガティブサプライズでした。

しかし、中国は全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)の開幕を3月5日に控えています。弱い経済指標はそこから出てくる政策への期待感が高まることにもつながります。そのため、今後は政策期待での買いが進みやすい状況になるのではないかと私は予想します。

中国のITハイテク大手には割安感も

ところで、香港市場に上場している中国のITハイテク大手の株価水準は、米国のITハイテク大手と比較すると、割安感も感じられるところです。

例えば、現時点(2021年3月2日執筆時点)で、テンセント(00700)の2021年12月期の市場平均予想PERは37.1倍、2022年は30.6倍です(出所:ブルームバーグ、以下同)。同じく、中国政府からの規制の悪影響を受けて株価が下がっていたアリババ(09988)は2022年3月期の市場平均予想PERは20.1倍、2023年3月期は16.2倍です。

米国株を見てみるとアップルは2021年9月期の市場平均予想PERは28.9倍、2022年9月期は27.5倍、マイクロソフトは2021年6月期の市場平均予想PERは32.0倍、2022年6月期は29.4倍です。

もちろんPERを単純に比べられるわけではありませんが、成長率を合わせて考えると中国のITハイテク大手には割安感を感じるところではないでしょうか。現在の調整局面は、長期目線で中国のITハイテク大手の株式購入を検討しても良いタイミングなのかもしれません。